アクチュアリー試験に関する諸質問について

今日は、「The road of Sunshine」というブログ
http://sunshine1156.blog45.fc2.com/blog-entry-60.html
にあった、アクチュアリー道場の合宿
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20091019
での「質問のポイント」のうちアクチュアリー試験に関するものをとりあげます。


これらについてはアクチュアリー道場の合宿で答えが出たのかも知れませんが、合宿に行かれていない方もいらっしゃると思うので、そのような方々の参考に供することを目的としています。


>・数学以外の科目は数学より難しいか。
数学以外の科目は数学とは異質な難しさがあると考えます。

(1)生保数理
●独特の記号に慣れるのが厄介です。逆にそれに慣れれば数列+(高3レベルの)積分の問題なのでそれほど苦にならないはずです。
●参考図書・問題集がほとんど存在しません。

(2)損保数理
●数学的なレベルは「数学」よりも高い部分があります(「数学」で扱わない確率分布を使う等)。ただし、モデリングは、回帰分析を除いて出題されないですし、統計についても出題は少ないです。
●1次試験の中ではもっとも新しい科目であり、年により難易度の差が激しいのが特徴です。(2年前に猛烈に難しかったが、去年はやや易化。今年はどうでしょうか・・・?)
●(まともな)問題集としては「例題で学ぶ損害保険数理」くらいとなります。
●なお、このブログで何度か述べたように損害保険の基礎的な知識が前提とされている箇所(実務家の間では当然とされている箇所)があり、それらを知った上で受験するほうが理解が進むと考えられます。(もちろんそのようなことを捨象して純粋に「確率・統計の応用」として取り組むことも可能ですが)

(3)年金数理
●教科書の記述に慣れるのが大変です。
●加えて、個人レベルでの収支相等の原則をひっくり返される
http://twitter.com/actuary_math/status/5763116735
ので、生保数理とは頭を切り替える必要があります。(特に同時に受験している場合)
●数学的な内容としては、数列+一部で積分で十分です。
●参考図書・問題集が事実上ない状態です。

(4)会計・経済・投資理論
●昔は1次試験で一番易しい科目として位置付けられていました*1が、だんだん範囲が膨張していており、大変になってきています。
●加えて、今年から3分野で最低ライン(40%)をとらないと合格できなくなっています。会計は配点が低い(25点)が、慣れるまでに大変なので捨てるという作戦が使えなくなりました。
●数学的な内容としては高1の2次関数の変形(投資理論のポートフォリオ)、高2の数列(投資理論の一部)、微分(経済・投資理論で使う)、積分(経済で使う)程度です。
●参考書は豊富にあるのが救いです。(ただし、過去問以外は、アクチュアリー試験と関係ない部分が多いので要注意です)


ただし、前
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20091025
にも少し触れましたが、私の周囲の方を見る限りでは、1次試験で数学だけ残している(or残した)というケースが一番多い*2と考えます。
数学は、試験(3時間)における出題量が最も多いので、「体力勝負」という一面があるとも言え、可能であれば若いうちに合格しておくほうが望ましいと思います。

したがって、まずは、数学の合格に全力を注ぐべきだと思います。
その上で(学生さんで、もし時間的に余裕があれば、)会計・経済・投資理論に進まれるのをお勧めいたします。社会人になるとなかなか時間確保が難しいので、時間を確保できる学生のうちに勉強してその結果をサブノート等にまとめておくと、たとえ合格しなくても次年度以降につながると思います。
会計・経済・投資理論から受験するという手法もありますが、上記のようにもはや「易しい」科目でない割に、上層部の方が昔の「易しい」科目というイメージを持たれている場合もあるので費用対効果の面で一考を要すると考えます。


>・数学の1番の小問は部分点くれるのか。
>・大問は部分点くれるのか。
今は1次試験は全部マークシート式なので、純粋に合っているかどうかで判定され部分点には期待しない方がよいと考えます。(昔は大問では部分点を出していたとは思います)
余談ですが、アメリカのアクチュアリー団体であるSOA・CAS等の試験では日本の1次試験に相当する部分は多肢選択式であるのみならず、CBT(Computer Based Testing)で行われているようです。
だからid:ftoyodaさんのように日本で受験
http://d.hatena.ne.jp/ftoyoda/20091108
することが可能になっています。

CBTになると今回のようなインフルエンザ騒動
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20091116
のようなことは回避される確率が高まると考えられ(中小規模のコンピューター試験会場をいくつも確保しておいて、そのうちいくつかが閉鎖されても他の会場に振り分ける)、もしかしたら、去年から始まった1次試験のマークシート化は、CBTへの布石なのかも知れません。


>・計算用紙どのくらいくれるのか。
最初の計算用紙は1枚とか2枚だったと思いますが、要求すれば追加でいくらでもくれます。もちろん常識の範囲内だと思いますが。

*1:投資理論が入ったのは1996年からで、それまでは「会計・経済」でした。

*2:損保数理は2000年に導入された科目であり、それ以前の受験者は損保数理についてはみなし合格している場合があるという点には注意しなければなりませんが。