アクチュアリー試験に役立つ知識(5)

今回は、カイ2乗分布について考えてみましょう。
前々回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081123
に述べたように

アクチュアリー試験においては、
(1)自由度nのカイ2乗分布\chi^2(n)は、\Gamma(\frac{n}{2},\frac{1}{2})とかける。
(2)Xが自由度mのカイ2乗分布\chi^2(m)に従い、Yが自由度nのカイ2乗分布\chi^2(n)に従い、XYが独立なとき、Z=X+Yは、m+nのカイ2乗分布\chi^2(m+n)に従う。
の2つに加え、
カイ2乗分布に特有な性質として、
(3)Xが標準正規分布(平均0、分散1の正規分布N(0,1)に従うときX^2は自由度1のカイ2乗分布\chi^2(1)に従う。
をまず、覚えましょう。
(ここまでが九九)

このことにより即座に
(4)X_1,X_2,\cdots,X_nが独立に標準正規分布に従うとき、
Y=X_1^2+X_2^2+\cdots+X_n^2は自由度nのカイ2乗分布\chi^2(n)に従う。
ことがわかります。

そして最終段階(試験直前)になって自由度nのカイ2乗分布\chi^2(n)確率密度関数
(5)\frac{1}{2^{n/2}\Gamma(n/2)}\exp(-\frac{x}{2})x^{n/2-1}
を覚えます。

このとき、ガンマ関数の性質
(6)\Gamma(x+1)=x \cdot \Gamma(x)
(7)x=n(正の整数)のとき、\Gamma(n)=(n-1)!
(8)\Gamma(\frac{1}{2})=\sqrt{\pi}
について押さえておかなければいけません。
なぜならガンマ関数のままの形で答えを書くことは(まず)許されないからです。
(それゆえ、出題されるのはガンマの中が整数か「整数÷2」とかける場合かのいずれかに限定され
前々回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081123
に述べた
カイ2乗分布を除くとα=n(整数)、β=1のケースが圧倒的に多い
のようなことが言えるのです。)

前置きが長くなりましたが今回の問題(もちろん過去問)を取り上げます。

(問題)
「確率変数X,Y,Zが、すべて標準正規分布N(0,1)に従うものとする。
このとき、U=X^2+Y^2+Z^2の密度関数f(u)は、
f(u)=\left{ \begin{array}{cc} \fbox{1} & (u > 0) \\ 0 & (u \le 0) \\ \end{array} \right.
である。」

この問題は上記の(4)を押さえれば(u > 0) のとき、
f(u)=\frac{1}{2^{3/2}\Gamma(3/2)}\exp(-\frac{u}{2})u^{3/2-1}
=\frac{1}{2\sqrt{2}\Gamma(3/2)}\exp(-\frac{u}{2})\sqrt{u}

であることがいえます。
ただし、\Gamma(\frac{3}{2})はそのままに出来ないので
\Gamma(\frac{3}{2})=\frac{1}{2}\Gamma(\frac{1}{2})=\frac{\sqrt{\pi}}{2}として、
最終的には、
f(u)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\exp(-\frac{u}{2})\sqrt{u}
となります。

過去問題集の解答では3次元極座標変換(ヤコビ行列式)を用いていますが、
前回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081125
お伝えしたように
3次(以上)のヤコビ行列式を使わなくても解ける
ようになっています。

次回は、ガンマ分布とガンマ関数に関する問題を取り上げます。