アクチュアリー「受験活動」と就職活動(就活)

今、就職活動(就活)の時期なのですが、このようなコメント
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100121#c1264143263
をいただきました。

いつもお世話になってます。

今僕は工学部物理系の3年生でアクチュアリーを目指すことに決めました。

入学当初(アクチュアリーを目指す前)から大学院に行くつもりだったのですが、アクチュアリーを目指すとなると今の学部は直接アクチュアリーの勉強に関係ある学部ではないので、研究しながら資格の勉強ができるか不安です。

就活もしていないので、とりあえず大学院には行くことになりそうなのですが、
やはり数学科やアクチュアリー専攻のある大学院でないと勉強は厳しいでしょうか?

また、学部を卒業してから1年間アクチュアリーの勉強に専念すること(公務員浪人と同じような形)も考えたのですが、就活ではこのようなことはあまり良く評価されないのでしょうか?

この質問にお答えしたいと思うのですが、最近の就職活動(就活)事情には疎いので(アクチュアリー以外の部分では)的を外しているかもしれないのでご了承ください。
(最近アクチュアリー候補として就職活動された方から、コメント・メール・Retweetいただけると幸いです)


(1)まず、学生(大学3年以上)あるいは大学院在学中に合格されている人の専攻はアクチュアリー」(試験)の勉強に関係がないことが多いはずです。
これまで見たようにアクチュアリー試験のベースとなる数学は大学2年までのもの(教養の微積分、線型代数)なので、数学科特に大学院の研究は、まず、アクチュアリー試験の勉強に直結しません
在学中に合格された皆様は、アクチュアリー(試験)には直結しない研究をしながら時間を確保したのだと思います。
また、在学中に2次試験も含めて全7科目に合格することはまずないので社会人になってからも試験を受けないといけないのですが、社会人が大学院生より暇ということは普通はないので、大学院生の間に勉強時間の確保が難しいということであれば、社会人になって確保するのはもっと難しくなると考えられます。

どうしてもアクチュアリー(試験)に関連する大学院に行かれたいのであれば
大阪大学 金融・保険教育研究センター
http://www-csfi.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/
日本大学大学院総合基礎科学研究所地球情報数理科学専攻アクチュアリーコース*1
http://www.chs.nihon-u.ac.jp/ri_in/j/departments/earth04.html
などになると思われます。


(2)就職活動(就活)ですが、今からでは遅いのでしょうか
例えばライフネット生命
http://recruit.netseiho.com/
のように今から採用活動を行うことを明記している会社もあるし、

その他
http://twitter.com/shukatsu_witter
のURLにある
http://就活カレンダー.com
日本語ドメインなので要注意)を拝見すると

今もセミナーをやっている会社はいくつもあるようです。

(以下、5年以上前なので今では違っているのかも知れませんが)アクチュアリー採用の場合は、大抵数学を中心とする(独自の)試験を課すはずで、当然ですがその結果が重視されます。
試験をしてその結果が芳しくない方はそれまでの活動内容(OB訪問、インターン等?)如何に関わらずお引き取り頂きました。*2

逆に
試験で注目すべき成績を残せば、それまでの活動内容など無関係に引きがあるはず
です。

アクチュアリー採用については2月中旬(今回は2月16日)のアクチュアリー試験合格発表の結果も参考*3にするはずなので、試験が本格化するのは2月下旬から3月にかけてだと思われます。


(3)「学部を卒業してから1年間アクチュアリーの勉強に専念する」というのはまったくよくないと考えます。「公務員浪人」という言葉は初耳ですが、逆にそのような単語があるのは、そのようなことが可能なのは公務員だけという証左だと思われます。
日本の企業はなぜか「新卒」という「資格」を大変重視している傾向にあるように見受けられます。それを逃すと「既卒」扱いになってそれこそ「就職活動」の大きな妨げになります。(各種新卒対象のセミナー等にエントリーできなくなる)
また、上記に記したように、「研究(仕事)の合間に如何に試験勉強時間を確保する」かがアクチュアリー試験の主要なテーマの1つであるとも言えるので、それを外してアクチュアリー試験を合格することが評価につながるかどうかは注意すべきと考えます。
積極的にお薦めするものではありませんが、(金銭的な負担が許されるのであれば)「留年」してあくまでも「新卒」として受験するほうがまだいいと思います。
(もちろんその場合なぜ「留年」したかを企業の採用担当者にちゃんと説明できる理論武装があったほうが望ましいです。上記のように「アクチュアリー試験勉強のための留年」というのでは、採用担当者には評価されないと考えられます)


(4)なお、質問の趣旨からは外れるのですが、
大学3年・修士1年の「新卒就活」時期を逃したからといってアクチュアリーになるチャンスが永久に閉ざされたわけではない
ことです。

具体的な事例としては
http://www.elite-network.co.jp/x/j/tenshoku/voice_detail/?file_no=202&no=191
などです。

今の状況を簡単に述べると
(a)国際財務報告基準(IFRS)やEUのソルベンシーII(ローマ数字の2)の動きで保険負債(資産も)を時価評価しようとする流れがあり、そのような負債予測のためには、保険キャッシュフロー(保険料、保険金等)の将来予測がキーになり、そのような役割を担うのはアクチュアリー
(b)2005年の保険業法の改正により、「根拠法のない共済」が保険業法の適応対象になり、さらに、公益法人制度改革により、共済を行う公益法人保険業法の適応対象となった
などの動きがあり、アクチュアリーの受け皿が確実に増加しています。


『結婚前には両目を大きく開いて見よ。結婚してからは片目を閉じよ』
というのは、イギリスの神学者トーマス・フラーの言葉
http://meigen.shiawasehp.net/h/t-fuller01.html
だそうですが、

今はまだ
「両目を大きく開く」時期
ではないかと考えます。

*1: http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090929 で紹介した黒田先生がいらっしゃるところです。

*2:というよりも受験者のそれまでの活動内容については一切知らされておらず、純粋に試験の点数だけで次のステージに進まれる方を判定しました。もちろん大学名とかそういうのは試験の採点とは無関係です。

*3:あくまでも参考要素です。繰り返しですが、いくら合格科目があっても試験のできが芳しくない人にはお引き取り頂きました。