アクチュアリー試験の歴史(暫定版)

今日は、次の各Tweetsからこのようなエントリーを立ててみました。

http://twitter.com/s_iwk/status/13169008308

昭和時代の試験は1科目で準会員 RT @actuary_math: 1科目通ってなれるのは研究会員です。準会員になるには1次5科目全部受からないといけません QT @call_me_nots RT @maznami アクチュアリーの準会員って、まだ試験一科目通ればなれますか?

http://twitter.com/riskywheel/status/13169586772

部長格の人になんでこの人が準会員って人がいるのはそのせいか。納得。RT @s_iwk: 昭和時代の試験は1科目で準会員 RT @actuary_math


いわき(@s_iwk)さんのご指摘のとおり、今は1次試験に全部合格しないと準会員になれない(4科目までの合格は研究会員)ですが、昭和時代は1科目でも合格していれば「準会員」と呼ばれていました。


このこと自体は、「呼称」だけの問題で、上記の(Risky dice(@riskywheel)さんが御判断された)ような目的か、保険業法施行規則の少額短期保険業者の保険計理人の要件*1

http://www.nn.em-net.ne.jp/~s-iwk/2010-04-01/kisoku/a211_49.html

第211条の49(保険計理人の要件に該当する者)
法第272条の18において準用する法第120条第2項に規定する内閣府令で定める要件に該当する者は、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当する者とする。
一 社団法人日本アクチュアリー会の正会員であり、かつ、保険数理に関する業務に3年以上従事した者
二 社団法人日本アクチュアリー会の準会員(資格試験のうち5科目以上に合格した者に限る。)であり、かつ、保険数理に関する業務に5年以上従事した者

(太字引用者) (2010/5/3 この行修正)
とわざわざ断り書きを付けている理由を知る目的くらいにしか使えないトリビアですが、アクチュアリー試験範囲の微妙な変更等は過去問を見る上でも有益な情報だと思いますので昭和後期からのアクチュアリー試験の歴史を纏めてみることにしました。


とはいえ、さすがにアクチュアリー試験の過去の試験要領が今残っているはずもなく、下記は記憶と今アクチュアリー会のホームページに残っている限りの情報を頼りに作った「暫定版」です。


記憶違い等もあるかも知れませんので、皆様のご指摘(又は追加)をお待ちしております。

〜1988(昭和63)年

1次試験・2次試験の区別はなく、1科目でも受かれば準会員(研究会員はなかった)
6科目(数学1(確率)・数学2(統計)・保険数学1(基礎)・保険数学2(応用)・法規・経営)
なお、保険数学は生保数理(+保険数理2の一部に年金数理)であり、損保数理は含まれない。


(2010/5/3 追記)
いわきさんより、「昭和時代も研究会員はあったはず」というご指摘
http://twitter.com/s_iwk/status/13239866226
を受けたので、「(研究会員はなかった)」という記述に取り消し線を入れました。


(2010/5/5 追記の追記)
いわきさんより、当時の「研究会員」について
http://twitter.com/s_iwk/status/13353878058

当時はそもそも研究会員または準会員のみ受験可能だったので、試験を受ける前に入会が必要だったようです。入会方法は「入会の申込をし、理事会の承認を得」ることとあるので、例の正会員2名の推薦というやつでは。

とご教示をいただきました。
一応補足いたしますと、今の制度でも研究会員になるには試験に1科目合格することが基本ですが、「正会員2名の推薦」があれば(試験に合格していなくても)研究会員になることが可能です。


(2010/5/5 追記の追記の追記)
さらに上記に関して、生保アクチュアリーのむしまん(@mushiman2)さんより、
http://twitter.com/mushiman2/status/13397655313

iaj100年史の36、96、185ページにくわしいようです

とご教示をいただきました。
ちなみにIAJとはthe Institute of Actuaries of Japanの略で日本アクチュアリー会の英訳になります。
ついでに申し上げると、
(1)日本アクチュアリー会正会員はFIAJ(Fellow of the Institute of Actuaries of Japan)
(2)日本アクチュアリー会正会員はAIAJ(Associate of the Institute of Actuaries of Japan)
です。

1989(平成元)年

新試験制度(1次試験・2次試験)制度の開始
1次試験:数学1、数学2、保険数学1、保険数学2、年金数理、会計・経済
2次試験:保険コースと年金コースで各2科目
保険コースは、更に生命保険と損害保険に分かれており、
保険1が主に商品分野、保険2が主に経理分野
年金1は適確退職年金、年金2は厚生年金基金制度等
保険1を生保でとって保険2を損保(あるいはその逆)も可能だった?(実際やった人はいないと思いますが)
1次試験に1科目合格で研究会員、1次試験に全部合格すると準会員
旧試験制度に合格による免除(みなし合格)措置あり
なお、旧試験制度の1科目以上合格で「準会員」という呼称があっても、1次試験の残り(みなし合格以外の)科目に全部合格しないと2次試験には進めない。

1995(平成7)年

投資理論が追加され会計・経済・投資理論に
このときのウエートは会計30、経済・投資各35

2000(平成12)年

1次試験が6科目から現在の5科目に再編
数学1+数学2⇒数学
保険数学1+保険数学2⇒生保数理
損保数理が追加
このころ投資理論の試験範囲にデリバティブが追加され、投資理論のウエート増?
なお、保険コース、年金コースが生保コース、損保コース、年金コースに再編され、生保1+損保2(損保1+生保2)のクロス

合格は明確に不可になった。
再編前の試験合格による免除(みなし合格)措置あり、
数学1・2の両方に合格していると数学が免除
保険数学1・2の両方に合格していると生保数理が免除
数学1・2、保険数学1・2のどれか1科目にでも合格している人は損保数理が免除だったはず?

2005(平成17)年

数学にモデリングが加わる。
このころ会計の教科書の変更?
( 2010/10/12 追記
[twitter:@primes2]さんのご指摘
http://twitter.com/primes2/status/27044101673
により変更)

2006(平成18)年

数学の試験問題が全部選択式に。(翌年のマークシート式への布石?)
会計の教科書が変更
( 2010/10/12 追記
[twitter:@primes2]さんのご指摘
http://twitter.com/primes2/status/27044101673
により変更)

2007(平成19)年

1次試験がマーク式に
このころ、不合格の場合の得点ランクの通知開始?

2009(平成21)年

会計・経済・投資理論に足切りラインの設定(3分野のそれぞれで4割とれなければ不可)
これまで「噂」の域を出なかった合格ライン(60%)の明示
投資理論の教科書変更
会計、経済の教科書がそれぞれ新版に
経済の試験範囲に「ゲーム理論」が追加


以上

(2010/5/3 追記)
Yosuke Fujisawa(@actuaryjp)さんより
米国アクチュアリー試験の歴史に関してまとめたPDF
http://www.anea-asna.ca/documents/2006-2007/Waterloo_University_-_Educating_the_21st_Century_Actuary_by_Mary-Hardy.pdf
があるというご教示
http://twitter.com/actuaryjp/status/13248953432
をいただきました。


(2010/5/5 追記の追記)
Yosuke Fujisawaさんより上記の資料について
http://twitter.com/actuaryjp/status/13302104580

伝統的なアクチュアリー技法→コンピュータの出現→金融工学との融合、という流れがよく分かる。作者は米国アクチュアリー会の試験責任者です。

があるというご教示をいただきました。

*1:かつての損害保険会社の保険計理人の要件の1つに準会員で実務経験10年以上というのがありましたが、この準会員も「5科目以上合格者」に限られていました。