2.論述問題について

まず、いわきさんも述べられていますが
アクチュアリージャーナル第66号(2008年8月)の
「第2次試験に向けた勉強を進める上での留意事項」(以下「留意事項」)
は必読です。*1

(2010/5/31 21:13 JST 追記
まいすさんから
(1)当該留意事項がアクチュアリー会のサイトに残っている
http://www.actuaries.jp/examin/guide.pdf
こと
(2)説明会の資料が会員限定サイトに残っている
(事務局からのお知らせ→お知らせ一覧→第2次試験受験者向け説明会資料(2008年11月12日))
とのご指摘
http://twitter.com/maisudai/status/15102456389
がありましたので記しておきます。)


以下、留意事項といわきさんのブログで触れられていない点について主に述べます。

(1)論述の時間と得点について

しばしば忘れがちなこととして論述にかけられる時間の問題があります。
御存じのとおり、試験時間は3時間ですが、上記のとおり知識問題(といっても単なる語句の穴埋めだけではなく、計算や短文記述などバラエティーに富む)もあるので、論述にかけられる時間はせいぜい70〜80分がいいところです。
この時間内で
題意の把握→論理の構成→実際の書き込み→推敲
まで行わなければならず、実際に鉛筆シャープペンシル含む。以下同じ)をつかって書ける時間はせいぜい1時間がいいところです。


一旦書き始めたら大きく構成を変更できないのはもちろんですが、そもそも、
これだけの短時間で真に斬新なアイデアを生み出すことが極めて困難
です。
つまり、ごく穏当な論述になってしまうことが少なくありません(あまりに独自のものをと考え過ぎると、独りよがりの論述になり試験官の心証を大いに損ねる危険性が極めて高いです)。


よくできる方は別として、論述では穏当な内容でせいぜい5割(20点/40点)程度で、そのかわり知識問題では7割(42点/60点)以上得点し、合計で60点を少し上回るというのが、合格者の平均的な姿ではないかと考えます。(もちろん「普通」といってもそれほど簡単ではないのですが…)

(2)「論」を述べる前に

論述問題は、
「評論」が求められているわけではない
ことに注意する必要があります。
ブログ(書籍も?)ではときどき、保険に関してあまり造詣が深くないと思しき方が、十分な知識の裏付けのない「評論」を展開されているのを見かけます。
これと同じことをアクチュアリー試験でやるのはまずいと考えます。
つまり、正確でできれば豊富な*2な知識の裏付けを試験官に示してから論を進めるべきだし、当事者としてその問題に取り組むつもりで(実現可能な)「解」を提示する必要があると考えます。


いわきさんが上記のブログエントリーで述べられている
「ソルベンシーについての所見を問う問題」
を例にとると、もちろん「現行ソルベンシー・マージン比率の計算方法について長々と書かれ」るのは論外ですが、かといってそういう知識を飛ばして、いきなり「(日本の)ソルベンシー・マージンについてはかくあるべし…」といった実現性の乏しい「評論」を並びたてられても試験官は困惑すると考えます。

この問題だと、例えば

(a)知識面

○ソルベンシーとは何か
○日本におけるソルベンシー・マージン規制制定(平成8年の保険業法改正)の経緯
○現行ソルベンシー・マージン基準の概要と課題
ソルベンシー・マージン規制の改正の概要
○欧州のソルベンシーIIの概要

等を踏まえた(書いた)上で、

(b)論述

◎保険計理人の関与(上記の改正により平成24年3月期より保険計理人の確認対象)
◎自然災害リスクの管理
◎経済価値(時価)ベースの評価
◎内部モデルの使用
等について
○それぞれの(簡単な)説明
○必要性やメリット
○実現にあたっての課題
アクチュアリーとして何ができるか何をすべきか
を述べる

といった流れになるのではないかと思います。

(3)論述の具体的な対策

(a)論述テーマの予想と論点の整理

知識の習得の過程において、最近の法令の改正動向その他については自ずとキャッチしているはずなので、論述テーマについては、ある程度予想がつくと思います。
それら予想されたテーマについて自分で論点を考えてみて実際に論述してみることをお勧めします。
もちろん上記のように前提となる知識を踏まえなければならないため、それなりに準備が必要になります。
例えば上記のソルベンシーについては本番でも出題が予測される内容の一つで、それぞれの項目を列挙するのは簡単ですが、細かい中身については、いろいろと調べる必要が出てくると思います。
(これについては、例えば
いわきさんのブログの別のエントリー
http://iwk.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-ad08.html
とそこで示されている各リンクの記事等が参考になると思います。

(b)論点の複数人での検討

以上のような項目の検討については、可能であれば複数の受験生で行うとよいと思います。私も他社の人とそういう論点検討を行い、自分の思ってもみなかった論点を気づかされたことが多々ありました。
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100414
でも述べましたが、受験者同士のネットワーク形成が大事になってくると思います。

(c)実際に書いてみる練習

以上の個人(&グループでの)論点整理を踏まえ、答案を自分の手で書いてみる(PCのキーボードを打鍵するのではなく)必要があります。
上記のようにいくら出題内容が予測でき、論点が整理できたとしても70〜80分で書ける量は限られている(模範解答を「そのまま」書くと絶対に時間が足りない!)ので、どこまでの内容が書けるのかを自分の手で把握することが必要だと考えます。
また、(自分も含めてですが…)普段鉛筆で文字を書く機会はほとんどなくなっていると思うので、忘れている漢字等を思い出すいい機会でもあります。

(d)その他

表記面についてはいわきさんのブログでも述べられていますが、その他、九州大学の田口雄一郎先生が書かれている
「採点について」
http://www2.math.kyushu-u.ac.jp/~taguchi/nihongo/gakusei/grading.html
等も参考にされるとよいと思います

*1:アクチュアリー会のサイトにもアップされていたと思いますが今はなくなっていますと書いたのですが残っているというご指摘を受けました↑をご覧ください。

*2:正確性が優先されます。不正確な知識は有害無益です。