アクチュアリー採用問題の解答案(9)

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
から始まった
アクチュアリー採用問題の解答案」
シリーズの9回目です。


今日は、日本生命
http://d.hatena.ne.jp/actuary2/20090412/1239550975
を取り上げます。
(なお、面接その他については
http://d.hatena.ne.jp/actuary2/20100130/1264850993
をご覧ください。)


問題の分量・難度とも標準的だと考えます。
問題2は(1)がなければ(2)単独で出すのは難しいと考えます。( http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100203 でも少し述べましたが、このような「誘導問題」の意図を読み取ることが求められると思います。「(1)は(2)のヒント」と書いてある数学の参考書がありました。(今もあると思いますが) )
また、必要条件と十分条件(kの値を出すだけではなく、それを実現できるのか)の論述も求められると思います。


その他の注意点は
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
のそれと同じです。


問題1
(1)
a=100とおくと
与式
=\sqrt{a(a+1)(a+2)(a+3)+1}
=\sqrt{\{a(a+3)\}\{(a+1)(a+2)\}+1}
=\sqrt{b(b+2)+1}(ただし、b=a(a+3)
=\sqrt{b^2+2b+1}
=b+1
=a(a+3)+1
=10301…(ア)の答

(2)
2つのSをS1,S2と区別したときの並べ方は6!=720通り。S1とS2の並べ方は2通りなので、
720÷2=360通り…(イ)の答
(a)頭がAで残り5文字の並べ方は5!÷2=60通り
(b)頭がIで残り5文字の並べ方も60通り
(c)頭がN、2番目がAで残り4文字の並べ方は4!÷2=12通り
(d)頭がN、2番目がI、3番目がAで残り3文字の並べ方は3!÷2=3通り
NISSAYはこれら(a)〜(d)の
60+60+12+3=135個の「単語」に続く「単語」なので、
136番目…(ウ)の答

(3)
3軒のどこかに傘を忘れる確率は
1-\left(\frac{4}{5}\right)^3=\frac{61}{125}
AまたはBに忘れる確率は
1-\left(\frac{4}{5}\right)^2=\frac{9}{25}
Aに忘れる確率は
\frac{1}{5}
なので、
Bに忘れる確率は
\frac{9}{25}-\frac{1}{5}=\frac{4}{25}
∴忘れてきたのがBである確率は
\frac{4}{25}\div\frac{61}{125}=\frac{20}{61}…(エ)の答
(ちなみに傘を忘れたときに忘れてきたのがAとCである確率は
\frac{25}{61}\frac{16}{61}
3つ合計するともちろん1になる)

(4)
学生数をxとするとパーティの費用は2300x+1700
さて、
2300x+1700 < 2400x-350…(a)
2300x+1700-5000 < (2400-250)x…(b)
(a)より
x>20.5
(b)より
x<22

x=21…(オ)の答
これよりパーティの費用は2300*21+1700=50,000円…(カ)の答


(5)
面積が最大になるのは1辺aの正三角形のときでその面積は、
\frac{1}{2}a^2\sin60^{\circ}=\frac{\sqrt{3}a^2}{4}…(キ)の答

(理由)
OP=p,OQ=qとおくと、
余弦定理により
a^2=p^2+q^2-2pq\cos 60^{\circ}=p^2+q^2-pq…(a)
一方面積T=pqとおくとS=\frac{\sqrt{3}T}{4}なので、
Sが最大⇔Tが最大
である。
さて(a)より
a^2=p^2+\frac{T^2}{p^2}-T \ge 2\sqrt{p^2 \cdot \frac{T^2}{p^2}}-T=T(∵相加相乗平均の関係)
(等号は、p^2=\frac{T^2}{p^2}つまりp=qのとき成り立つ)

つまり、
T \le a^2
(等号は、p=q=aのとき成り立つ)
となる。(証終)

(6)
(キ)
I_1=\int_0^{\pi} \exp(-x) \cdot \sin x \, dx
=-[\exp(-x) \cdot \sin x ]_0^{\pi}+\int_0^{\pi} \exp(-x) \cdot \cos x \, dx
=-[\exp(-x) \cdot (\sin x+\cos x) ]_0^{\pi}-\int_0^{\pi} \exp(-x) \cdot \sin x \, dx
=\exp(-\pi)+1-I_1

I_1=\frac{\exp(-\pi)+1}{2}=\frac{1+\exp(\pi)}{2\exp(\pi)}…(キ)の答

(別解)
I_1=\int_0^{\pi} \exp(-x) \cdot \sin x \, dx
=Im \left( \int_0^{\pi} \exp(-x+ix) dx \right)
=Im \left(\frac{1}{-1+i} [\exp(-x+ix)]_0^{\pi}  \right)
=Im \left(\frac{\exp(-\pi+i\pi)-1}{-1+i} \right)
=Im \left\{\frac{\exp(-\pi)+1}{2}(1+i) \right\}
=\frac{\exp(-\pi)+1}{2}=\frac{1+\exp(\pi)}{2\exp(\pi)}

(ク)
I_{n+1}=\int_{n\pi}^{(n+1)\pi} \exp(-x) |\sin x|dx
=\int_{(n-1)\pi}^{n\pi} \exp(-y-\pi) |\sin (y+\pi)|dyy=x-\piと置換)
=\exp(-\pi)\int_{(n-1)\pi}^{n\pi} \exp(-y) |\sin y|dy
=\exp(-\pi)I_n
つまり(ク)の値はe^{-\pi}…(答)


(ケ)
\int_{0}^{\infty} \exp(-x) |\sin x|dx
=\sum_{n=1}^{\infty}I_n
=\sum_{n=1}^{\infty}[I_1 \cdot \exp\{-(n-1)\pi\}]
=\frac{I_1}{1-\exp(-\pi)}
=\frac{1+\exp(\pi)}{2\exp(\pi)}\frac{\exp(\pi)}{\exp(\pi)-1}
=\frac{1+\exp(\pi)}{2\{\exp(\pi)-1\}}…(答)


(7)
(コ)
X_nが3で割れないのはn回のサイコロの目が全部1,2,4,5のとき。
求める確率p_nは、
p_n=1-\left(\frac{2}{3}\right)^n…(答)
(サ)
1-\left(\frac{2}{3}\right)^n \ge 0.99…(A)
となるnを求める。
(A)より、
\left(\frac{2}{3}\right)^n \le 0.01
常用対数(底を10とする対数)をとって、
n \log_{10}\left(\frac{2}{3}\right) \le -2
n (\log_{10}2-\log_{10}3) \le -2
(0.1761)n \ge 2
n \ge 11.3 \cdots
なので、(サ)に入る数値は11…(答)


(8)
(シ)
APジョルダン標準形
J=P^{-1}AP=\left(\begin{array} \lambda_1 && a \\ 0 && \lambda_2 \end{array}\right)
に変形(ただしa=0 \, or \, 1)したとする。
\lambda_1+\lambda_2=\rm{tr}(J)=\rm{tr}(A)=3+2=5…(答)*1
(ス)
上式で
\lambda_1 \cdot \lambda_2=\det{J}=\det{A}=3*2-1*4=2…(答)

\lambda_1^3+\lambda_2^3
=(\lambda_1+\lambda_2)^3-3\lambda_1\cdot\lambda_2(\lambda_1+\lambda_2)
=5^3-3*2*5
=95…(答)


問題2
(1)
2つの解とあるのでa \ne 0としてよい。
解と係数の関係により
\alpha+\beta=-\frac{b}{a},\alpha\beta=\frac{c}{a}
これより
a^2(\alpha-\beta)
=a^2\{(\alpha+\beta)^2-4\alpha\beta\}
=a^2\left\{\left(-\frac{b}{a}\right)-4\frac{c}{a}\right\}
=b^2-4ac…(証終)


(2)
f(x)=ax^2+bx+cを定数項が0でない2次式とし、D(f)=b^2-4acで判別式を表わす。
さて、
xの2次方程式f(x)=0の解を\alpha,\betaとする。
f(x)に(操作1)を施した結果の2次式をg(x)とすると、
g(x)=0の解は\alpha-1,\beta-1なので、
判別式D(g)は、
D(g)=a^2\{(\alpha-1)-(\beta-1)\}^2=a^2(\alpha-\beta)^2=D(f)
一方
f(x)=ax^2+bx+cに(操作2)を施した結果の2次式をh(x)=cx^2+bx+aとすると、
D(h)=b^2-4ca=D(f)

つまり(操作1)、(操作2)いずれを施しても判別式は変わらない。
さて、もとの式の判別式は1-4*1*1=-3
これより
61^2-4*7*k=-3
となり、
k=133
である。
次に
x^2+x+1から(操作1)、(操作2)を何回か施して実際に133x^2-61x+7になることをみる。
(i)x^2+x+1に(操作1)を3回施すと(x-3)^2+(x-3)+1=x^2-5x+7
(ii)x^2-5x+7に(操作2)を1回施すと7x^2-5x+1
(iii)7x^2-5x+1に(操作1)を4回施すと7(x-4)^2+5(x-4)+1=7x^2-61x+133
(iv)7x^2-61x+133に(操作2)を1回施すと133x^2-61x+7
k=133が確かに題意を満たすことが確認された…(答)


問題3
(1)
n人の手の出し方は3^n通り。
k (1 \le k \le n-1)人が勝つ手の出し方は*2
(a)k人の選び方が{}_nC_k通り
(b)勝つ手の選び方が3通り(k人がグーかつ(n-k)人がチョキ等)
の積で
3{}_nC_k通り((1 \le k \le n-1)
∴求める確率は
\frac{3{}_nC_k}{3^n}=\frac{{}_nC_k}{3^{n-1}}
…(答)

(2)
求める確率pは(1)の答えをk=1, \cdots, n-1まで合計したもの
p=\frac{\sum_{k=1}^{n-1}{}_nC_k}{3^{n-1}}=\frac{-2+\sum_{k=0}^{n}{}_nC_k}{3^{n-1}}
さて、二項定理
(a+b)^n=\sum_{k=0}^{n}{}_nC_k \cdot a^k \cdot b^{n-k}
a=b=1を代入して
\sum_{k=0}^{n}{}_nC_k =2^n
なので、
p=\frac{2^n-2}{3^{n-1}}…(答)

(3)アイコ以外がでるまでじゃんけんを行う回数をXとする。
よって求める期待値E(X)
E(X)=p\sum_{n=1}^{\infty}nq^{n-1}(ただしq=1-p
とおける。
さて
\sum_{n=1}^{\infty}q^n=\frac{q}{1-q}=-1+\frac{1}{1-q}
の両辺をq微分([tex:0

*1:trは行列のトレース

*2:「n人が勝つ」ということはありません。