アクチュアリー採用問題の解答案(12:中締め)

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
から始まった
アクチュアリー採用問題の解答案」
シリーズですが今回で12回目で、とりあえず今回で「中締め」です。


今日は
中央三井信託
http://d.hatena.ne.jp/actuary2/20090412/1239502107
です。


90分で大問9問というのは、やや多めですが、他社の問題と類題が多数出題されているのが特徴です。(他社の方が「類題」という可能性もありますが、それにしても他社とのオーバーラップが多いと思います。)
また
問題3は、
http://twitter.com/kdmytk/status/6730060099
の一部(分散を求めていない)です。
このようなことから、今回は他社の解答の引用で済ませた箇所が多数あります。


なお、
問題8ではkの範囲の指定がありませんが、確率関数を全部足して1になるということからk \ge 0としました。
また、問題10の(1)はn \ge -1だと積分が収束しないので、nは単なる整数ではなく「非負の整数」だったと考えられます。


その他の注意点は、
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
のそれと同じです。


問題1
球9個を一列に並べた場合に3〜5番目がすべて赤である確率に等しい(1・2番目が1回目に取り出す2個の球に対応)
ところが、それは球9個を一列に並べた場合に1〜3番目がすべて赤である確率に等しく、1回で3個の球を取り出す場合にすべて赤である確率に等しい。
球が全て区別されているとして、3個の取り出し方は
{}_9C_3通り
赤球5個から3個の取り出し方は
{}_5C_3通り
∴求める確率は
\frac{{}_5C_3}{{}_9C_3}=\frac{5 \cdot 4 \cdot 3}{9 \cdot 8\cdot 7}=\frac{5}{42}…(答)


問題2
円をxy平面上の単位円、中心を\rm{O}
\rm{A}(1,0)とする、また、\rm{B}y座標を非負とする。
\rm{AOB}=\beta \, (0<\beta \le \pi )、∠\rm{AOC}=\gamma \, (0<\gamma \le 2\pi )
とする。
\betaを固定したとき、\triangle \rm{ABC}が∠\rm{ABC}=\pi/2となる直角三角形となるのは、\gamma=\piのときで、\triangle \rm{ABC}が∠\rm{BAC}=\pi/2となる直角三角形となるのは、\gamma=\pi+\betaのときである。
逆に\pi<\gamma<\pi+\betaのとき、\triangle \rm{ABC}は鋭角三角形になる。
つまり図の赤色部分が鋭角三角形になる部分(青色が鈍角三角形になる部分)であり、その確率は
\frac{1}{4}…(答)


問題3
出口にでるまでの時間を表わす確率変数をTとおき、E(T|X)で道Xを選んだ場合に出る時間を表わすとすると、 
E(T|A)=2,E(T|B)=3+E(T),E(T|C)=5+E(T)
となる。
また、
P(A)=P(B)=P(C)=\frac{1}{3}
なので、
E(T)=E(T|A)*P(A)+E(T|B)*P(B)+E(T|C)*P(C)
=\frac{1}{3}\{2+3+E(T)+5+E(T)\}

3E(T)=10+2*E(T)
E(T)=10
つまり求める平均時間は10時間である。…(答)


問題4
住友生命
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100225
の問題2の(i)で
p \to \alphaとしたうえで1-a_n(Bの勝利=Aの破産)を求めると

1-\frac{\alpha^{N-n}\{(1-\alpha)^n-\alpha^n\}}{(1-\alpha)^N-\alpha^N}
=\frac{(1-\alpha)^N-\alpha^N-\alpha^{N-n}\{(1-\alpha)^n-\alpha^n\}}{(1-\alpha)^N-\alpha^N}
=\frac{(1-\alpha)^n\{(1-\alpha)^{N-n}-\alpha^{N-n}\}}{(1-\alpha)^N-\alpha^N}
…(答)


問題5
東京海上日動
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
の問題1(6)のp_1,p_3
(1)
\frac{32}{3,125}
…(答)
(2)
\frac{992}{3,125}
…(答)


問題6
ベータ関数
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081204
の問題
三井生命
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100204
の問題9を参照
(2)
a,b自然数(0以上の整数)のとき、
B(a,b)=\frac{(a-1)!(b-1)!}{(a+b-1)!}
(1)はこれにa=3,b=4を代入して
B(a,b)=\frac{2!3!}{6!}=\frac{2 \cdot 6}{720}=\frac{1}{60}


問題7
Aが1回目1を出さなかったときに、Bが勝つ(条件付き)確率をpとおく、
Bが2回目・3回目のいずれもで2〜6を出した時、Aの勝つ確率はpとなる。
つまり、
1-p=\left(\frac{5}{6}\right)^2 \cdot p
が成り立つ。
(あるいは、
p=1-\left(\frac{5}{6}\right)^2+ \left(\frac{5}{6}\right)^2 (1-p)

これより
p=\frac{36}{61}
∴求める確率は、
\frac{1}{6}+\frac{5}{6}(1-p)=\frac{241}{366}
…(答)


問題8
E(X+1)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{18}{(k+2)(k+3)(k+4)}
=9\sum_{k=0}^{\infty}\left\{\frac{1}{(k+2)(k+3)}-\frac{1}{(k+3)(k+4)}\right\}
=\frac{9}{2*3}
=\frac{3}{2}
…(答)


問題9
(1)
ガンマ関数
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081202
を使って
\int_0^{\infty}x^n \exp(-x) dx=\Gamma(n+1)=n!
ですが、ここではそれは使わず帰納法で示すことにします。


nは非負の整数のとき
\int_0^{\infty}x^n \exp(-x) dx=n!…(A)
であることを、数学的帰納法で証明する。

(i)n=0のとき
\int_0^{\infty}x^n \exp(-x) dx
=\int_0^{\infty} \exp(-x) dx
=-[\exp(-x)]_0^{\infty}
=1
で(A)は成り立つ。
(ii)n=k \, (k \ge 0)のとき(A)が成り立つとすると、
n=k+1のとき
\int_0^{\infty}x^n \exp(-x) dx
=\int_0^{\infty}x^{k+1} \exp(-x) dx
=-\left[x^{k+1} \exp(-x) ]_0^{\infty}+(k+1)\int_0^{\infty}x^k \exp(-x) dx
=(k+1)\int_0^{\infty}x^k \exp(-x) dx
=(k+1)\cdot k!(∵帰納法の仮定により)
=(k+1)!
n=k+1のときも(A)は成り立つ。
(i)(ii)よりnは非負の整数で(A)は成り立つ。
…(証終)


(2)
x^2=tとおくと、2xdx=dtなので、
\int_0^{\infty} x^3 \exp(-x^2) dx
=\frac{1}{2}\int_0^{\infty} t \exp(-t) dt
=\frac{1}{2}
…(答)
積分は上記(1)でn=1を代入したもの)


(3)
\sqrt{1-x^2}=tとおくと、1-x^2=t^2-2xdx=2tdtなので、
\int_0^1 x^3 \sqrt{1-x^2} dx
=-\int_1^0 x^2 t^2 dt
=\int_0^1 t^2(1-t^2)  dt
=\int_0^1 (t^2-t^4)  dt
=[\frac{t^3}{3}-\frac{t^5}{5} ]_0^1
=\frac{2}{15}
…(答)


(別解)
x^2=sとおくと、2xdx=dsなので、
\int_0^1 x^3 \sqrt{1-x^2} dx
=\frac{1}{2}\int_0^1 s \sqrt{1-s} ds
=\frac{1}{2}B\left(2,\frac{3}{2}\right)
=\frac{\Gamma(2)\Gamma(3/2)}{2\cdot \Gamma(7/2)}
=\frac{\Gamma(3/2)}{2 \cdot \Gamma(7/2)}
=\frac{\Gamma(3/2)}{2 \cdot(3/2)\cdot(5/2) \cdot\Gamma(3/2)}
=\frac{2}{15}


(4)
T&Dフィナンシャル生命
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100218
の問題2の(1)で
p=\frac{1}{5}
を代入して
\sum_{n=1}^{\infty}\frac{n}{5^n}=\frac{1/5}{(4/5)^2}=\frac{5}{16}


以上


http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100208
のコメント欄で書いたように、大同生命の問題の解答については就活シーズンが終わってから付けることにいたします。


改めて問題を掲載してくださった id:actuary2 さんにこの場を借りて御礼申し上げるとともに、皆様のご健闘をお祈りいたします。