「損保数理」、「生保1」、「損保」テキスト改訂について

日本アクチュアリー会から「損保数理」、「生保1」、「損保」テキストの改定の通知が出ています。
http://www.actuaries.jp/info/text_kaitei_H21.html


この中でこのブログの主たる読者の方と関係が深いのは「損保数理」の改訂だと考えられます。
当然ながら今年度の試験は改訂後のテキストに沿って出題されます。
そこで損保数理の改訂内容について「予測」してみたいと思います。


改訂内容の通知でまず目を引くのが
「第7章 保険料算出原理(新設)」
の部分です。


恐らく、
期待値原理、標準偏差原理、VaR、Tail-VaR、エッシャー(Esscher)変換、ワン(Wang、王)変換
などがポイントになるのだと考えられます。


田口茂氏、浜野雅章氏(お二人とも日本アクチュアリー会正会員です。)
「損害保険における負債評価と保険リスク」
http://www.fsa.go.jp/frtc/kenkyu/ousyuu/08.pdf
のp33に具体的に記載されています。
(なお、当該ページにΦとあるのは、標準正規分布の分布関数)


また、
「損害保険テキストならびに損保数理実務において一般的になりつつある理論や手法等を追加」
したとあるので、例えばIBNR(既発生未報告支払)備金の算出方法として、ボーンヒュッター・ファーガソン法(Bornhuetter-Ferguson法、BHF法)が追加になる可能性があります。
損害保険の保険計理人の実務基準
http://www.actuaries.jp/info/sonpo_jitumukijun_H20_B2.pdf
の第19条にもっとも一般的なIBNR予測手法であるチェイン・ラダー法とともに列挙されているからです。


ボーンヒュッター・ファーガソン法について日本語で書かれている文献は少ないのですが、

(1)
「例題で学ぶ損保数理」(ISBN:4320017358
のpp.170-171に例題として取り上げられています。

(2)
日本アクチュアリー会会員の方は
会員専用ページ
https://www.actuaries.jp/member/user/index.php
から
ライブラリー→ムーンライトセミナー資料→平成15年度
数値計算例を見ることができます。
(ここには上記のエッシャー変換、ワン変換の資料もあります)

(3)
九州大学大学院数理学研究院田中立志先生
「IBNR見積法のサーベイ : ランオフ三角形とチェインラダー法」
https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/handle/2324/13269
でも若干触れられています。


なお、私はテキスト委員とは関係ないので、本稿はあくまで「予測」に過ぎないことをご了解ください。
実際の改訂内容については7月上旬にも予定されている実際のテキストの発行を待つことにいたしましょう。