アクチュアリー試験「損保数理」改訂箇所への対応

前々回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20091119
損保数理の「保険料算出原理」に関して記事を書きましたが、ブログの読者の方から
損保数理の他の部分で新規に追加になった分野への対処法を聞かれました。(過去問題がないため)


今回は、そのご質問に答える形で書いてみたいと思います。


(1)まず、基本となる本としては、このブログでも何回かリファーした
「例題で学ぶ損害保険数理」(isbn:4320017358)があります。
ただし、この本の例題100題を全部やるのは効率的とは言えないと考えます。
http://actuary.upthx.net/download/reidai_sompo.csv 
に優先度をまとめてみましたので適宜ご参照ください。


(2)それではそれぞれの分野で具体的に見ていきます。

(a)第2章(クレームの分析)の1−7ページ(クレーム額分布)、24−28ページ(クレーム総額の分布関数の計算方法)
前半のうち最尤推定量の分散については上記(1)の例題9で取り上げられています。余裕があれば、ポワソン分布や指数分布のパラメーターで最尤推定量の分散を考えてみるとよいでしょう。
それ以外の部分は無視してよいと考えます。(しいて言えば2−24の再帰法の公式の「記憶」が問われる可能性はあるくらいでしょうか?)
複合ポワソンでないクレーム総額の問題は単なる「組み合わせ」の問題で解けることがほとんどなので(普通の電卓を使う問題ではこれくらいのいわゆるトイ・プロブレム(Toy Problem)が限度)、これらの公式は知らなくても計算はできるはずです。
ただし、去年の問題を見ると公式の穴埋めのようなものが出ていたので、そのような問題の可能性として上記の再帰法を挙げた次第です。
どうしても勉強したいのであれば「統計データの数理モデルへの適用」( http://www.actuaries.jp/lib/toukei.html )やムーンライトセミナー*1の平成16年の資料を使うことが考えられます。ただし費用対効果の観点からは、まったくお薦めできませんが。

(b)第4章(クラス料率)の18-23ページ(一般化線形モデル)
これは、間違いを訂正した章末問題くらいだとおもいます。

(c)第5章(支払備金)の23−36ページ(BHF法/ベンクテンダー法/確率論的アプローチ)
BHF(ボーンヒュッター・ファーガソン)法は極めて大事です。( http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090609 もご覧ください)
(1)でカバーされている(例題76)のでこの例題を解けばよいでしょう。
ベンクテンダーは(1)でカバーされていないですが、BHFとチェインラダーとの合成というだけでそれほど難しくはありません。
確率論的アプローチについては上記ムーンライトセミナーの平成15年の資料をご覧ください。(BHF等の説明もあり)
ただし、BHFはともかく、確率論的アプローチの優先順位は極めて低いです。(上記の(a)の後半と同じことです)

(d)第8章(危険理論の基礎)の後半部分
これについては、上記(1)のいくつかの例題で相当カバーされています。(というよりも上記(1)で取り扱いのあったことが教科書に書かれている感すらあります)

(e)モデリングの回帰分析分野
これはモデリングで学習すればよいのですが、個人的には
上記(c)のBHF法とこの回帰分析の係数のt検定が今回の新規追加箇所の中で最重要
(試験でも実務でも)

と考えています。
上記(1)の例題77・84で回帰分析を行っているのですが、係数が0でないことに対するt検定を行っていません。したがって、その検定も含め行うとよいでしょう。
(回帰分析については次回改めて述べます。)

*1:準会員以上に参加資格のあるセミナー。結果については、会員専用ページのライブラリー >> ムーンライトセミナー資料で見ることができます。会員の方しか利用できない(そのためここでも掲載できません)のであしからずご了承ください。