アクチュアリー採用問題の解答案(4)

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
から始まった
アクチュアリー採用問題の解答案」シリーズですが、今日は4回目で、
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100129#c1264833219
でリクエストのあった
東京海上あんしん生命
http://d.hatena.ne.jp/actuary2/20090412/1239538385
の問題に先に対応いたします。


ここでは、問題4がポイントでしょう。
まずCによる場合分けが必須です。
また、厳密には、常微分方程式の解の一意性を言わないと(0除算を排除できない)ので(出題された場所によっては*1、大きな)減点の恐れがあります。
他の問題は大学入試として出されてもおかしくない問題で、ここだけ常微分方程式の解の一意性(通常大学教養数学の2年生レベル)とかいうのはレベルが突出している気もするので、ここまでの議論は求められていないかも知れません。
ただし、常微分方程式の解の一意性を御存じの方は、ここで厳密な論証を書いておくと大いにアピールできると考えます。
(このような状況によって解法や記述(の厳密性)を変えるという話はまた別の機会にしたいと思います。)


その他の注意点は
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
と同じです。


問題1
199個の解を\alpha_{1},\alpha_{2}, \cdots ,\alpha_{199}
とする。

\alpha_{i} \, (1 \le i \le 199)は、
\alpha_{i}^{199}+10\alpha_{i}-5=0
つまり、
\alpha_{i}^{199}=5-10\alpha_{i}
を満たす。
これを
i=1,2, \cdots ,\alpha_{199}
で足すと、
\sum_{i=1}^{199}\alpha_{i}^{199}=995-10\sum_{i=1}^{199}\alpha_{i}
さて、
\sum_{i=1}^{199}\alpha_{i}は、解と係数の関係より、
x^{199}+10x-5=0の198次の係数に等しいので=0。

\sum_{i=1}^{199}\alpha_{i}^{199}=995…(答)


問題2
f(x)+1x=-1を三重根に持つことから、
f(x)+1=(x+1)^3 \cdot g(x)とかける。
これを、x微分すると、
f'(x)=3(x+1)^2 \cdot g(x)+(x+1)^3 \cdot g'(x)
となるのでf'(x)は、(x+1)^2で割り切れる。
同様にf(x)-1について考えると、f'(x)は、(x-1)^2で割り切れる。
これらのことより
f'(x)は、(x+1)^2(x-1)^2で割り切れるが、f'(x)は4次式なので、
f'(x)=a(x+1)^2(x-1)^2=a(x^4-2x^2+1)
とかける。

f(x)=a\left(\frac{x^5}{5}-\frac{2x^3}{3}+x\right)+b
f(-1)=-1,f(1)=1より、
\left\{ \begin{array}{l} -\frac{8}{15}a+b=-1 \\ \frac{8}{15}a+b=1 \end{array} \right.
これより、
a=\frac{15}{8},b=0
つまり、
f(x)=\frac{15}{8}\left(\frac{x^5}{5}-\frac{2x^3}{3}+x\right)
=\frac{3x^5-10x^3+15x}{8}…(答)


問題3
与方程式を変形して
lmn-(lm+mn+nl)+(l+m+n)-1=14
(l-1)(m-1)(n-1)=14
l-1,m-1,n-1は、l-1>m-1>n-1を満たす非負の整数なので、
l-1=7,m-1=2,n-1=1

l=8,m=3,n=2…(答)


問題4
|f(y_1,x)-f(y_2,x)|=|y_1-y_1^2-y_2-y_2^2|=|y_1-y_2|\cdot|1+y_1+y_2| \le |y_1-y_2|(1+|y_1|+|y_2|)
ここで、y(x_0)=Rとすると、y(x)微分可能ゆえ当然連続関数なので、ある\delta>0が存在して、 |x-x_0|<\delta \Rightarrow |y-R|<|R|とできる。特に|y|<2|R|
つまり、
|x-x_0|<\delta \Rightarrow |f(y_1,x)-f(y_2,x)| <(1+2|R|)|y_1-y_2|
とできるので、x_0の近傍ではリプシッツ条件が成立しており、この近傍では一意に解が存在する。
(例えば、
http://www.math.nagoya-u.ac.jp/~naito/lecture/2002_SS.ode/PDF/resume-06.pdf
をご参照)
以下これらの近傍を次々とつなげていき、実数全体で解は一意に存在する。

さて、あるx_1y(x_1)=0…(a)
だったとすると、
y(x) \equiv 0 \,(for \, all \,x)…(b)
は明らかに求める方程式の解であり、上記の解の一意性の議論よりこれが唯一の解である。
つまり(a)と(b)は同値である。((b)⇒(a)は明らかだがその逆も成り立つ)
同様に
あるx_2y(x_2)=1
y(x) \equiv 1 \,(for \, all \,x)
も同値である。

これらのことから、
(i)C=0のとき、
y \equiv 0
(ii)C=1のとき、
y \equiv 1
(iii)C \ne 0,1のとき、
上記の議論より、どのxに対してもy(x) \ne 0,1 つまり、常にy-y^2 \ne 0なので、
\frac{1}{y-y^2}\frac{dy}{dx}=1
とできる。
これより、
\int \frac{1}{y-y^2}\frac{dy}{dx}dx=\int dx
\int \frac{dy}{y-y^2}=\int dx
が成り立つ。
さて、
\int \frac{dy}{y-y^2}=\int \left(\frac{1}{y}+\frac{1}{1-y}\right)dy
=\log \left| \frac{y}{1-y} \right|+kkは定数)*2
これより、
\frac{y}{1-y}=a \cdot \exp(x)aは定数)
が成り立ち、
y(x)=\frac{1}{1+b \cdot \exp(-x)}b=\frac{1}{a})・・・(c)
となる。
さて
y(0)=C
だったので、
y(x)=\frac{1}{1+b}=C

b=\frac{1-C}{C}でありこれを(c)に代入して整理すると、
y(x)=\frac{C \cdot \exp(x)}{C \cdot \exp(x)+1-C}・・・(答)
(2010/2/1 追記 C<0のとき、y(x)が定義できない点ができます。詳細はコメント欄をご覧ください。)
(2010/2/3 追記の追記 C>1のときも、y(x)が定義できない点ができます。C=0.5)、C=-1)、C=2)のグラフの外形を
http://f.hatena.ne.jp/actuary_math/20100203075605
に作ってみました。)

*1:「例えば、数学科の試験では」という意味です

*2:普通はCですが、使われているので