アクチュアリー試験受験の知恵(6)

今までは「戦術」の話が多かったのですが、
今回は、

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20080814
にも少々触れました、
アクチュアリー試験の時間・問題量・合格水準等に着目した「戦略」面について考えてみます。
(本来はもう少し早めにお話すべきだったかも知れません)


アクチュアリー試験の数学の形式ですが、以下のような特徴があります。
1.昨年度(平成19年度)から全問マークシート式になっています。(数学に限らず一次試験の全科目)
2.
(1)問題1が12問(確率、統計、モデリング各4問)で
答えの数値・算式を選択式で60点(1問5点)
(2)問題2は確率の穴埋め(算式等の選択)問題で20点
(3)問題3は統計の穴埋め(算式等の選択)問題で20点
この形式・配点については問題2・3が記述式→穴埋め式になった以外は平成18年度からかわっていません。
3.合格水準についてはアクチュアリー会からは一切公表されていないのですが6割程度といわれています。
(2009/10/12補記:平成21年度の試験からは、合格基準が公表され、今まで「噂」の域を出なかった6割という数字が初めて公になりました。)

上記のことから極端な話をすれば例えば、モデリングが0点でも合格できると考えられます。
それに対し確率・統計で大きな穴をあけると致命傷になるおそれがあります。


もちろんモデリングも無視せず取り組んだほうがいいのですが、それは確率・統計が確実に出来るようになった後の話です。
(なお、モデリングについては回帰分析、時系列解析、確率過程、シミュレーション、線形計画法の5つの分野があるのですが、最初の4つの分野から各1問ずつの出題(つまり線形計画法は出ていない)となっています。)


なお、ご存知の方も多いと思いますがモデリングが入ったのは平成17年度の試験からです。
もともと確率+統計でやっていたのですが(平成11年度以前は確率と統計で別の科目でした。)、国際アクチュアリー会シラバスに対応されるためにくっつけたという経緯があります。
そのためモデリングのウエートが小さくなっているわけです。


さて、話をもとに戻すと
試験時間は3時間なので、問題2・3(+見直し等)の合計で1時間かけるとすると
小問(問題1)12問に掛けられる時間は120分で1問あたり10分になります。



http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20080814
に示した3次行列の逆行列を求める問題などは、電卓を使って正確に計算するためには10分超かかってもおかしくないので、
後回しにするか場合によっては捨ててもいい問題
なのです。


このほかにも、合格水準から考えて、
捨てていい問題(出る可能性が低く、出ても小問数問程度)
もいくつか存在します。


そのような分野の例としては、前記の線形計画法の他、統計の細かい話題(例:一致推定量、一様最有力検定)があります。
(生保数理でも例えば「第6章 計算基礎の変更」は出題範囲になっていますが、私が受験しているときには(その過去問題5年間を含めて)出ていなかったし、その後アクチュアリー受験のサポートなどで見ていた限りも出ていませんでした。)


以上を踏まえて普段から
過去に出題されば問題を中心にメリハリをつけた学習
を心がけられるとよいと考えます。


なお、以上の話は優秀賞(各科目の上位1・2名が表彰を受けられます)を狙われる方には当てはまりません。
そのような場合は、上記の線形計画法や統計の細かいところも含めて完璧に対策を立てる必要がありますが、
当ブログではそのような方は主たる対象とは想定されていないのでご了承ください。