アクチュアリー試験に役立つ知識(10:最終)
「アクチュアリー試験に役立つ知識」シリーズについては今回で最後にしたいと思います。(試験関連の書き込み自体はもう少し続ける予定です)
今回は、フビニ(Fubini)の定理に纏わる話です。
(定理)(フビニの定理)
が絶対積分可能、つまり、
のとき、
もとの(絶対値)をとる前の積分の順序交換が可能
つまり、
・・・(*)
特に、積分範囲においてが常に成り立つとき、
(*)(ただし、両辺∞の場合もありうる)
が成り立つ。
(積分の片方または両方をΣとしても成り立つ。)
証明は(数学科の)大学3年(以上)レベルの測度論(積分論)の範囲になるのでここでは省略しますが、主張自体はそれほど難しいものではありません。
いつものとおり過去問からです。
(問題)
確率変数は平均のポアソン分布に従う。確率変数を次のとおり定義するとき、を求めよ。
まず、
さて、これが絶対積分可能であることが言えるので(その確認は結局下の積分交換後の計算と同じようになるので省略します。)、
フビニの定理により、もとの積分とΣが順序交換可能であり、
(∵は、平均、分散1の正規分布の平均を求める積分の式なので)
となります。
過去問題集における解答は順序交換をせずに計算するものでしたが、フビニの定理を上手くつかうと実際の積分の計算はほとんど不要になることが分かります。
他にも過去問で、このような問題もありました。
(問題)
を正の整数値をとる確率変数とする。
とおくとき、
を証明せよ。
をご覧になっていただくのが手っ取り早いと思います。
とおきます。
は、図の横→縦の順番で合計しますが、
縦→横の順番で合計するように順序交換すると、(なので順序交換が可能)
図の最後の行の右辺は、
となり、これは
に一致します。