「アクチュアリー・サービス」に関するアメリカの要求

今から約10年前に、アメリカが「アクチュアリー・サービス」、具体的には、
「米国と日本のアクチュアリー関係者」の「相互承認」
を要求していたようです。


「日本における規制撤廃、競争政策、透明性及びその他の政府慣行に関する日本政府への米国政府要望書
1999年10月6日」
http://web.archive.org/web/20050309071714/http://tokyo.usembassy.gov/e/p/tp-2502.html
によると

「保険」に関して、
A.行政手続
B.アクチュアリー・サービス
C.簡易保険
に関して要求がされています。


C.については、御存じのとおり「郵政民営化」で達成されたといってよいでしょう。
A.についても部分的ではありますが、ある程度達成していると考えられます。


B.の「アクチュアリー・サービス」具体的には、「米国と日本のアクチュアリー関係者」の「相互承認」だけがこの10年間ほとんど手つかずだったと考えます。
私の知る限り、アメリカのアクチュアリー組織(SOA、CAS)と日本アクチュアリー会で会員資格を認めたという話はないはずです。*1


ちなみに、かつては行われていた英語による出題があったのもなくなっています。*2


もちろん試験委員の皆様のご負担という面は理解しているつもりですが。


<資料>
日本における規制撤廃、競争政策、透明性及びその他の政府慣行に関する日本政府への米国政府要望書
1999年10月6日
http://web.archive.org/web/20050309071714/http://tokyo.usembassy.gov/e/p/tp-2502.html

金融サービス

II. 保険

 米国は、米国および他の外資系保険会社に対して日本の保険分野の規制を撤廃し、市場を開放するという日本の金融監督庁とその他の関係機関の努力を歓迎する。日本の保険分野の規制を撤廃することは、他の先進国市場で広く流通している革新的で、安い商品やサービスを日本の消費者が利用することを可能にする。保険提供における民間部門の役割を最大限にする一方、政府の役割は最小限にしつつ、日本は、この業界の財務的健全性を確保するための規制撤廃措置をさらに講じ、消費者の信頼を高めるべきである。

II-A. 行政手続きおよび慣行の改善 米国は、日本政府が保険分野における免許、許可および承認に関する行政手続きおよび慣行に関して以下の改善を行うことを強く求める。

II-A-1. 米国は、日本に対し広範にわたる保険料率及び約款を統制するため、届出と同時にその商品を扱える「サイマルテニアス・ファイル・アンド・ユース」制度を2000年度当初より導入することを強く要請する。ファイル・アンド・ユース制度が十分な透明性をもって運用されることを確保するため、金融監督庁は、1998年3月31日の規制緩和3カ年計画にしたがって、自由裁量の余地を最小限にする一方で、商品の審査基準を明確化し、特定し、定量化するために基準の見直しを行うべきである。

II-A-2. 金融監督庁は、行政手続き法と整合する形で保険会社とあらゆる意思疎通を図るべきである。

II-A-3. 商品審査を行う上で、公平さや透明性を確保する更なる措置として、金融監督庁は「ファースト・イン・ファースト・アウト(先着順処理)」制度を採用すべきである。この制度の採用により、商品が複雑すぎたり革新的すぎるという理由による審査の遅れは解消される。

II-A-4. 米国は、金融監督庁が大量に増加しつつある保険商品の申請に適切に対応できるよう、1999年度に同庁商品認可担当課の職員が増員されたことを歓迎するとともに、2000年度にはさらに大幅な増員が行われるよう提案する。金融監督庁による手続きは、コンピューター化やインターネットなどの関連技術資源の利用を通じて近代化、合理化されるべきである。

II-B. アクチュアリー・サービス 米国政府は、サービス貿易に関するWTO合意の条項と整合するよう、米国と日本のアクチュアリー関係者が相互承認に関して合意を結ぶ努力をするよう求める。

II-C. 簡易保険(簡保) 民間の保険会社が現在提供している商品分野において政府の簡易保険が役割を拡大していることは、日本が目標とする自由(フリー)で、公平(フェアー)な世界規模(グローバル)の金融市場をめざす規制撤廃という目的にはそぐわないものである。こうした保険制度は、保険業法の領域から外れるものであり、金融監督庁や公正取引委員会の監督下にないものである。そのため、米国は日本に対し、民間保険会社が提供している商品と競合する簡易保険(簡保)を含む政府および準公共保険制度を拡大する考えをすべて中止し、現存の制度を削減または廃止すべきかどうか検討することを強く求める。

*1:SOAの正会員が日本のアクチュアリー会の研究会員になることができる、あるいはその逆の制度があったような気がしますが、そもそも日本アクチュアリー会の研究会員であれば試験に合格しなくても正会員2名の推薦でなれるのだから、それはとても「相互承認」とは呼べないと考えます。

*2:1次試験は日本語・英語で出題されていました。また昔は台湾や中国でも受験ができたのですが、それもなくなっています。