アクチュアリー試験における数学的な基礎力について

前回のエントリー
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090827
の最後に述べた
「数学的な基礎力」
について


http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090220
でも述べましたが、
(1)高校数学III(ローマ数字の3)までの関数(指数関数、対数関数、三角関数)、数列、微積分、行列、確率を「完璧」にマスターすること
(2)大学教養課程の微積分の基礎(偏微分、ヤコビ行列式、重積分、ガンマ関数、ベータ関数、べき級数、(常)微分方程式
(3)大学教養課程の線型代数の基礎(行の基本変形、はきだし法、行列式固有値固有ベクトル
あたりが
アクチュアリー試験受験のために必要な「数学」の基礎知識と考えられます。


さらに細かく列挙すると概ね以下のようになると考えられます。
http://actuary.upthx.net/pukiwiki/index.php?1.1.0.%B4%F0%C1%C3%C3%CE%BC%B1
で述べようと考えている事項です。)


1.数式
(1)展開・因数分解
(2)べき乗の展開とパスカルの三角形
(3)相加平均・相乗平均
(4)コーシーシュワルツの不等式


2.三角関数
(1)三角比の定義
(2)主要な三角比の値
(3)正弦定理・余弦定理
(4)加法定理
(5)倍角の公式・半角の公式
(6)和積、積和の公式


3.指数・対数
(1)指数法則
(2)指数関数
(3)対数の定義
(4)対数の性質
(5)対数関数


4.数列
(1)等差数列
(2)等比数列
(3)Σの定義
(4)Σの性質
(5)Πの定義
(6)Σk,Σk^2,Σk^3の計算
(7)Σr^(k-1)とΣk*r^(k-1)の計算
(8)Σ1/{k(k+1)}とΣ1/{k(k+1)(k+2)}の計算
(9)漸化式であらわされた数列の解法


5.極限
(1)無限数列の極限
(2)極限の性質
(3)重要な数列の極限
(4)無限級数とその性質
(5)重要な無限級数
(6)eの定義と性質
(7)関数の極限とその性質
(8)重要な関数の極限


6.微分
(1)微分の定義
(2)微分の性質
(3)x^αの微分
(4)合成関数の微分
(5)逆関数微分
(6)積の微分
(7)商の微分
(8)指数関数の微分
(9)対数関数の微分
(10)三角関数微分
(11)ロピタルの定理
(12)偏微分
(13)ヤコビヤン(ヤコビ行列式)
(14)高階微分ライプニッツ
(15)テーラー展開


7.積分
(1)不定積分
(2)定積分
(3)積分の性質
(4)広義積分
(5)基本的な関数の不定積分
(6)置換積分
(7)部分積分
(8)微分積分学の基本定理
(9)微分方程式の解法(変数分離形)
(10)ガンマ関数の定義
(11)ガンマ関数の性質
(12)ベータ関数の定義と性質
(13)2重積分と逐次積分
(14)2重積分ヤコビヤン


8.べき級数
(1)べき級数の定義
(2)べき級数の性質
(3)アーベルの(連続性)定理


9.線型代数
(1)行列の定義
(2)行列の和・差・積
(3)行列の基本変形
(4)ガウスの吐き出し法
(5)行列式と小行列展開
(6)逆行列
(7)固有値固有ベクトル


10.確率の基礎
(1)場合の数
(2)順列と組み合わせ
(3)二項定理
(4)事象と確率の定義
(5)確率の基本性質
(6)独立試行


ここで列挙した項目に少しでも不安があれば(公式をすぐに再現できないようであれば)高校数学の参考書等で問題演習を行うなどして、公式をすぐに再現できるレベルに持っていくことが望まれます。


私は、アクチュアリー採用(アクチュアリー枠)のための試験問題作成・採点を行ったこともあるのですが*1、残念ながらこのあたりの基礎を押さえられていない方が少なからず見受けられました。
このブログを読者の方で、アクチュアリー試験受験を考えられる皆様は、そのようなことのないようにしましょう。

*1:念のために申し上げると「アクチュアリー採用」(アクチュアリー枠)はアクチュアリーになるための必要条件でも十分条件でもありませんhttp://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090220 でも述べたように文系学部でアクチュアリー採用とは無関係の方でアクチュアリーになった方はいらっしゃいますし、アクチュアリー採用でない方がアクチュアリー採用の方よりも早くアクチュアリーになられるケースもしばしば存在します。アクチュアリー採用については、またの機会に投稿する予定です。