生保数理(定常人口)についての問答(1)
読者の方からアクチュアリー試験の生保数理(定常人口)についてのご質問を受けたので、その質問と回答についてご質問者のお許しを得た上で2回に分けて掲載し、3回目で2回目のご質問に関連した「図」を使った解法をご紹介いたします。*1
(質問1)
生保数理の指定教科書の内容について不明な点があって質問させていただきたいのです。
生保数理の指定教科書の第2章の定常人口についてなのですが、p70〜71にかけて、定常人口においてx才から(x+1)才の人口は
(※)
と表せると書いてあります。
ここで疑問に感じたのは、は閉集団においてはx才の生存数を表していたので、定常人口においてそれを「積分」することで人口を求められるのであれば、はもはや人数ではなく、「人数密度」とでも呼ぶべきものを表しているのか?、ということです。(確率密度関数を積分すると確率となることの類似)
そうなると、定常状態においてx才の人口はどのように表せるのでしょうか?
(※)式を使うとでしょうか ?
それともでしょうか?
定常人口のところの教科書の説明はどうもわかりにくくて困っています。
(回答1)
御質問の件ですが、お説のとおり
「はもはや人数ではなく、「人数密度」とでも呼ぶべきものを表している」
という御理解でよろしいのではないかと考えます。
そもそも、
>は閉集団においてはx才の生存数を表わしていた
というところですが、正確には、
「同時に生まれた人がx年後に生存している人数」
となると考えられます。
つまりとすると、x年後の生存確率そのものです。
日本アクチュアリー会が作って各生命保険会社が使用している生命表では、としていますが、が何であっても保険料その他の値には、変化はありません。
開集団の話では、人が一年を通じて「一様に」出生する場合を考えており、(テキスト上巻p70下から8行目)まさしく、「人数密度」(単位時間あたりの人数)といってよいと考えます。
>定常状態においてx才の人口
ですが、
x歳を生後ちょうどx年たった者と考えると、
ということになります。
生後ちょうどx年0日0時0分0秒の者の人数は0と考えられるからです。
(0から10までの数をランダムに選んだときの「ちょうど」1を選ぶ確率が0であるのと同様)
一方
x歳を生後x年以上(x+1)年以下の者と考えると
(※)
となります。
私が受験時代に作ったノート*2では、
この定常社会については、上のの定義の他
・≒
・x歳以上の人口:
・x歳以上の死亡者の平均年齢=
・、特に総人口死亡率=
・x歳から(x+n)歳の間で死亡する者の平均年齢は、
の5つだけを記録して覚えるようにしていました。
生保数理は昔の2科目分が一緒になっており意外に範囲が広く、「定常社会」については生保数理の中ではあきらかに傍流と考えられるので、上記の式に絞って後は無視するくらいでもいいのではないかと考えますがいかがでしょうか?
*1:なお、質問をされる方は、予め http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090510 にお目通しください。
*2:昔の手書きのノートがあり、アクチュアリー試験研究WIKI http://actuary.upthx.net/pukiwiki の方で数学(去年ひととおりアップした数学の整備と基礎知識の完成)の目処がたったら生保数理の方もと考えてはいるのですが、なかなかそちらまで手が回らず申し訳ありません。