生保数理(定常人口)についての問答(2)

前回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090915
の回答を受けた再質問とそれに対する回答です。


(質問)
ただ、定常社会について以下のような問題がありました。
この場合どう理解すればよいかわかりませんでした。
(生保年金数理〈1〉(理論編) isbn:4563011339 黒田耕嗣著 培風館 p178)

『定常状態にある社会において、総人口に対する出生率が1.25%で、1年間の死亡者数が2,600人で、40歳以下の人口が総人口の50%を占め、41歳以上の人の死亡率が2.4%であるとする。

(1)総人口を求めよ。
(2)41歳人口を求めよ。
(3)40歳以下の死亡者の死亡時の平均年齢を求めよ。
(4)41歳以上の死亡者の死亡時の平均年齢を求めよ。』

という問題で、解答は以下のとおりでした。

『問題の条件から、以下の関係式が成り立つ。
\frac{\ell_0}{T_0} = 0.0125 \,  \ell_0 = 2,600 \, \frac{T_{41}}{T_0}  = 0.5 \, \frac{\ell_{41}}{T_{41}} = 0.024
これより、T_0 = 208,000 \, T_{41} = 104,000 \, \ell_{41} = 2,496

(1)総人口T_0 = 208,000人 
(2)41歳人口\ell_{41} = 2,496
(3)40歳以下の死亡者の死亡時の平均年齢は\frac{T_0-T_{41}-41 \cdot \ell_{41}}{\ell_0-\ell_{41}} = 16
(4)41歳以上の死亡者の死亡時の平均年齢は41+\frac{T_{41}}{\ell_{41}} = 82.67

ここで気になったのは(2)の41歳人口のことです。
前述の理解だと0人になる気がします。
もしくは40歳以上41歳以下ということで\int_{40}^{41} \ell_t dtではないか、とも思えます。

また、解答中の\frac{T_{41}}{T_0}= 0.5は40歳以下の人口が総人口の50%を占めることから立式したのであれば\frac{T_{40}}{T_0}= 0.5ではないかとも思います。
なぜT_{40}でなくT_{41}か納得いきません。


(回答)
>ここで気になったのは(2)の41歳人口のことです。
>前述の理解だと0人になる気がします。
ここですが、41歳を満年齢で考えて、通常は生後41年以上42年未満の人口と解釈するのが妥当だと考えます。
(生後41年たって初めて満41歳と称することに注意しましょう)

ただその場合は、
L_{41}=\int_{41}^{42} \ell_t dt
であり、(左辺は大文字のL、右辺は積分区間に注意)
これは与えられた条件だけでは決まりません。

もしこの生後41年超42年までの間で死なないと考えれば、
L_{41}=\int_{41}^{42} \ell_t dt=\ell_{41}*1=\ell_{41}
でテキストの解答どおりとなります。

おそらく、筆者は(定常社会は連続的に生存が発生すると仮定しているのに)この時点において離散的に考えてしまったのではないかと推察されます。

したがって、これについては、問題の設定自体に瑕疵があると言わざるを得ません。
(もちろんこのような瑕疵のある問題は本番ではでないし、もし、出題された場合は、問題にミスがあるとして全員正解ということになると思います。)

>解答中の\frac{T_{41}}{T_0}= 0.5は40歳以下の人口が総人口の50%を占めることから立式したのであれば\frac{T_{40}}{T_0}= 0.5ではないかとも思います。

これですが、40歳以下とは生後41年未満(生後40年と364日目の人はあくまでも満40歳)という解釈で
\frac{T_{41}}{T_0}= 0.5
としているのだと考えます。

なお、このような定常社会の問題は「図」を使うと小学生の算数の問題として解けることが少なくありません。この問題もそれに当てはまります。それについてはブログでご説明したいと存じます。

(回答終わり)


「図」による解法については、上記のメールでも述べたとおり次回ご説明いたします。