2009年度アクチュアリー試験解説速報(損保数理)
数学の解説速報
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100103
に続いて損保数理のそれを作ってみました。
(
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100105
ではちょっとお見苦しいところを見せてしまいましたが。)
最初に感想を申し上げると一息(?)ついた去年と一転してまた難しくなっているようです。
しばらくはこのような状態が続くのかもしれません。
なお、注意点は数学のそれと同じです。
問題1
I
(1)
クレームコスト()
計 | |||
10.000 | 13.000 | 11.929 | |
8.125 | 7.800 | 7.927 | |
計 | 8.571 | 9.176 | 8.945 |
(問題文の指示により小数点以下3桁まで)
相対クレームコスト()
計 | |||
1.118 | 1.453 | 1.334 | |
0.908 | 0.872 | 0.886 | |
計 | 0.958 | 1.026 | 1.000 |
(これも問題文の指示により小数点以下3桁まで)
加法型のミニマム・バイアス法では
(テキスト4-28ページ)
が成り立つ。
となる。
これより
→の答えは(C)
(2)
次に
→の答えは(C)
II
(1)
より、
→の答えは(E)
決定係数
全変動
残差変動
→の答えは(G)
(2)
の係数の最小二乗法による推定値は、
を満たす。
これを解いて、
(ちなみに)
一方、誤差分散の推定量は、(1)の残差変動をで割った3.15。
また、
∴t値は
→の答えは(F)
この値が2.920より小さい。つまりこのような値が出現する確率は5%以上あることになる。
従って、は、採択される(棄却できない)
→の答えは(A)
III
(1)
テキスト7-6ページを「暗記」していればよいが、簡単に纏める。
:期待値(>0)の倍がリスクプレミアムなので非負→(A)
:の値に制限がないので、保険金の上限を超えることもあり得る→(B)
:なので、不成立→(B)
:なので、成立→(A)
:なので、成立→(A)
(リスクが独立でなくても成立)
:標準偏差(>0)の倍がリスクプレミアムなので非負→(A)
:の値に制限がないので、保険金の上限を超えることもあり得る→(B)
:なので、成立→(A)
:なので、成立→(A)
:なので、不成立→(B)
(2)
なので、
積率母関数を持たないものを選べばよく、それは(G)の対数正規分布のみ
→答えは(G)
IV
(1)
をクレーム額の分布、をクレーム総額の分布とする。
Lundberg(ルンドベリ)の不等式による保守的な破産確率は
(は調整係数、は初期サープラス)
従って、
一方
→答えは(E)
(2)
は、の解
よって
を解いて、
→答えは(C)
問題2
I
(1)
維持費のうち定額部分の現価は、
→の答えは(B)、(F)(順不同)
維持費のうち保険金比例部分の初年度〜10年度の現価は、
(10年目までは保険金が変わらないので維持費も変わらない。)
→の答えは(B)、の答えは(E)
維持費のうち保険金比例部分の11年度〜15年度の現価は、
(11年度目の支払いは保険始期から10年後、以下同様)
→の答えは(B)、(E)、(G)(順不同)
(2)
保険金の初年度〜10年度の現価は、
保険金の11年度〜15年度の現価は、
∴長期係数をとするとき、収支相等の式は
これよりは、
さて、
を小数点第2位まで求めるとそれぞれ、
9.36、4.85、13.54
となるので、
→答えは(F)
II
(1)
で一様に分布する確率変数に対してはそれぞれ、
0 | 10 | 5 | |
10 | 20 | 15 | |
20 | 30 | 25 | |
30 | 40 | 35 |
∴クレーム額に対して、はそれぞれ、
→答えは(E)
(2)
帰無仮説
(ただし、は平均の指数分布)
区間 | クレーム件数 | 期待観察数 |
0以上10未満 | 68 | |
10以上20未満 | 19 | |
20以上30未満 | 8 | |
30以上 | 5 |
(問題文の条件により、期待観察数は整数値)
∴
→答えは(F)
(3)
自由度は(区分数:4)−(パラメーターの数:1)−1=2
(なお奇数の自由度だとでの積分が不完全ガンマ積分となり、与えられた条件からは計算できないので奇数の自由度ではないと推察できる)
求める確率は、
→答えは(G)
III
(1)
∴
→答えは(F)
(2)
∴
→の答えは(D)
さて、
と変形できる。
前者(積率母関数が1)は確率1でとなる確率変数であり、
後者(積率母関数が)は、平均の指数分布である。
(テキスト2-36〜2-37ページも参照)
→の答えは(E)
IV
(1)[tex:0
尤度関数をとすると、
∴
これを0にするは、
→答えは(I)
(3)
求める期待値は、
と
の和となる。
(支払い対象となる事故は期待値の計算に含まないためで割算することに注意)
ここでを代入すると、
→答えは(A)
なおこの問題を解くプロセスで(2)の選択肢のうち、(A)、(B)、(E)、(F)、(H)、(J)は不適と推察できる。なぜならこの問題でそれぞれ11、23、13、9(3乗根のさらに3乗根)、29、31乗根の計算を必要とし、それは与えられた数値と普通の電卓では極めて面倒(ニュートン法を使えば不可能ではないが)だからである。
また、(G)の場合は2.5乗を求めることになり、これもを15乗して√をとれば計算不可能ではないが極めて不自然。
V
(1)
expの中身は
つまり、
なので、
分散は、
→答えは(G)
(2)
上の式変形により
の平均は
つまり
→答えは(B)
問題3
I
(1)ロスディベロップメントファクター(LDF)
1→2 | 2→3 | 3→4 | |
2006年度 | 2.557 | 1.394 | 1.179 |
2007年度 | 2.847 | 1.216 | |
2008年度 | 2.607 | ||
単純平均 | 2.670 | 1.305 | 1.179 |
累積LDF
2007年度:1.179→(B)
2008年度:1.179×1.305=1.539→(D)
2009年度:1.179×1.305×2.670=4.108→(H)
最終保険金
2007年度:4,016×1.179=4,735
2008年度:3,501×1.539=5,388
2009年度:1,384×1.539=5,685
3年度計:15,808
3年度の累計支払保険金=4,016+3,501+1,384=8,901
IBNR:15,808-8,901=6,907
→の答えは(G)
(2)
予測最終保険金=既経過保険料×予定損害率
2007年度:9,771×55%=5,374
2008年度:10,023×60%=6,014
2009年度:10,331×60%=6,199
2007年度:1-1/1.179=0.152
2008年度:1-1/1.539=0.350
2009年度:1-1/4.108=0.757
予測最終保険金×
2007年度:5,374×0.152=817
2008年度:6,014×0.350=2,105
2009年度:6,199×60%=4,690
3年度計:7,612
→答えは(I)
II
(1)
テキスト6−20ページ下から6行目の
にテキスト6−16ページ上から8行目の
を代入して、
→答えは(A)
(2)テキスト6−20ページ上から10行目の
に、
を代入して、
→答えは(B)
III
(1)
クレーム件数を、クレーム額をとするとき、の積率母関数を求める。
∴
さて、保険を買わない場合の効用は
→答えは(C)
(2)
保険料の上限は
(テキスト7−23ページ練習問題2)
∴
→答えは(D)
IV
(1)
テキスト8−42ページ(8.3)式→答えは(A)
(2)
テキスト8−44ページ(8.9)式→答えは(G)
(3)
(テキスト8−44ページ上から7行目)
これに数値を代入して
→答えは(J)
V
(1)
まず1事故あたりの保険金に対して、での条件付期待値を求める。
つまり、
一方、
を元受保険金×(出再保険金額/元受保険金額)(「再保険による回収率」)を表す確率変数とするとき、
超過額再保険なので、元受保険金×(出再保険金額/元受保険金額)が再保険金(再保険による支払金額)
(超過「損害」額再保険との違いに要注意)
になるので、
したがって1事故あたりの再保険金の期待値は、
(∵条件付期待値の性質により)
(∵上記のの積分ではを含む式はとは無関係なので積分の外に出せる)
求める年間再保険期待値は、契約1件あたりの平均事故件数2と(契約件数)を乗じたもので、
→答えは(F)
(2)
1事故での保険金をとしたとき、超過額再保険からの回収後の正味保険金は、
これが超過損害額再保険のエクセスポイント10を超えるのは、
つまり
(この値をとする)
∴
1事故での保険金で超過損害額再保険からの回収が発生する確率は、
とするとき、
…(ア)
一方、を平均のポワソン分布、各が独立に二項分布に従うとき、
の分布は、平均のポワソン分布
(例えば
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081120
参照)
これより、
本問ではこれにと(ア)を代入して、
→答えは(H)
以上