今更ながら「アクチュアリー」とは何か

本ブログは、アクチュアリー試験日本アクチュアリー会資格試験)の受験の効率的なやり方を研究しているブログですが、
(北米では)「2010年の「最高の職種」はアクチュアリー
http://slashdot.jp/article.pl?sid=10/01/08/0332201
という記事も出たことから、業界の外の方もご興味を示された方もいらっしゃるようなので、改めて「アクチュアリー」とは何かを考えてみたいと思います。(既にアクチュアリーを目指している方には分かり切ったことを書いているかも知れませんがご容赦ください。)


アクチュアリー(actuary)*1とは、保険会社・信託銀行等で働く保険・年金数理の専門職種です。


アクチュアリーの発祥はイギリスと言われており、(日本ではほとんど知名度がありませんが)欧米では人気の職業の1つであることは間違いありません。(上記の調査でも去年は2位でした)


保険・年金は先に料金(保険料・掛金)を頂いた後でサービス(保険金・年金)するという普通の商品と逆の特質があります(これを「原価の事後確定性」といいます。)。頂く保険料・掛金は、過去のデータ等に基づいて、統計的に予測する必要があります。
また、保険料・掛金をそのまま株主への配当等に使ってしまうと、後の支払(保険金・年金)が出来なくなるので、後の支払に充てる金額(責任準備金と呼ばれます)を確保(貸借対照表上の負債勘定として)しておかなければなりません。責任準備金についても将来の支払を統計的に予測する必要があります。


このような保険料・掛金・責任準備金の統計的な予測を行う専門職がアクチュアリーということになります。


なお、「アクチュアリー」を日本語に訳して「保険数理士」とか「保険数理人」とか言われることもあるのですが、「保険計理人」*2や「年金数理人」*3などと紛らわしいので、「アクチュアリー」とそのまま表記することが多いです。

http://www.actuaries.jp/intro/H20gaikyo.pdf
によると、平成21年3月末の(個人)会員数は
名誉会員 6
正会員 1,234
準会員 936
研究会員 1,885
合計4,061
となっています。


さらに詳細な説明については
日本アクチュアリー会のサイト
http://www.actuaries.jp/actuary/index.html
などをご覧になるとよいと思います。


(追記)
ただし、上記のサイトを読まれるにあたっては1点注意すべき点があります。
「人々にとっての“将来”は、常に不確定要素で満ちています。決して望まないような出来事も起こってしまう可能性はあり、そうした万が一の出来事は人々に精神的、経済的な負担を強います。また、死亡のように「いつ起こるか分からないが、確実に起こる」出来事もあります。そうした"将来の出来事"の発生確率を評価し、望まれない出来事の発生確率を減らすよう知恵を絞り、」
という部分です。
アクチュアリーは医者や消防士や安全技術の専門家ではないので、死に至る人を助けたり、火事を消したり、自動車事故を防いだりすることはできません。
「望まれない出来事の発生確率を減らす」という「望まれない出来事」は「死亡・火災・自動車事項」等ではなく、「保険会社等の破綻」ということあと考えられます。当然ながら「保険会社等の破綻」を防ぐためにアクチュアリーはできる限りの「知恵を絞り」ます。

*1:ちなみに映画「ラブ・アクチュアリー」の「アクチュアリー」はactuallyでactuaryとは無関係です。

*2:保険業法第120条で http://www.nn.em-net.ne.jp/~s-iwk/current/hou/a120.html で保険会社に選任が義務付けられている保険料の算出方法その他の事項に係る保険数理に関する事項に関与する者。基本的には日本アクチュアリー会の正会員+実務経験がないと保険計理人にはなれませんが、保険計理人だけでは保険数理をカバーしきれないのでそれ以外のアクチュアリーも大勢います。

*3:厚生年金保険法第第176条の2 http://www.houko.com/00/01/S29/115.HTM#176-2 に規定される「年金数理に関する業務に係る書類が適正な年金数理に基づいて作成されていることを確認」する者。