アクチュアリー採用問題の解答案(6)

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
から始まった
アクチュアリー採用問題の解答案」
シリーズの6回目です。


今回は第一生命
http://d.hatena.ne.jp/actuary2/20090414/1239722142
です。


問1(1)と(2)ではそれぞれ2通りの解法を紹介しています。
2通りの解法は解法1がいずれも簡便法で、解法2がもう少し突っ込んだものです。


http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100125/1264419256
で述べたこととも関連するのですが、「論理的」と考える基準は、採点者によって個人差があります。

例えば問1(1)の解法1は、ふつうよく使う(このブログでもそうしていますが)数学科の答案だと減点の可能性があります。
なぜならばヤコビヤンを使った変数変換の証明は1対1対応かつ有界な集合の上で証明しているはずなので、
(a)(0,0)で1対1になっていない
(b)∞が入る
という2つの点が問題になるのです。
これをカバーしようとなると(解法2)相当に面倒なことになります。


私の基準は、
問1(1)の方はどちらでもいい
問1(2)については、解法1なら減点かも…(テーラーの定理を使った展開とはいえない)
ですが、もちろん採点者がこれと違った基準を持っている可能性はあります。
(実際の採点は、恐らく問1(1)・(2)とも解法1・2どちらでも可だったのではないかと考えます。もちろん保障はできませんが)


(出題者)採点者名が明かされてはいない*1ので、その採点基準については出された問題から推測する他ありません
前に取り上げた、ε−δ論法を使うような問題が出題されている大同生命
http://d.hatena.ne.jp/actuary2/20090411/1239419156
等とは採点基準も異なってくるのではないかと考えます。


このように(アクチュアリー(採用)試験に限った話ではないのですが)、
限られた時間の中でどこまで詳しく述べるか
ということに一種の心理的な駆け引きが伴うことはご留意されたほうがよいのではないかと考えます。(さらに申し上げると、問題を解くことそのものにも相手の心理読みが入るのですが、それは別の機会に申し上げます。)


問2(2)については誘導問題に乗って解いていますが、普通の3項間漸化式
特性方程式の解\alpha,\betaに対して、a_n=p\alpha^n+q\beta^nただしp,qは定数)
で解いてもよいと思います。


問3では証明と共に係数を求めさせる問題なので、最初から係数を含んだ形で数学的帰納法を使うことを考えます。
なお、「ヒント」で2^2-1^2= \cdotsまで合計する旨書かれていますが、実際には1^2-0^2= \cdotsまで合計するのが正しいと考えられます。
id:autuary2 さんにも確認済み)


その他の注意点は
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
のそれと同じです。


問1
(1)
(解法1)
I^2=\int_0^{\infty}\int_0^{\infty}\exp(-x^2-y^2)dxdy
(x,y)極座標変換(x=r\cos\theta,y=r\sin\theta)して
ヤコビヤンは、
\frac{\partial(x,y)}{\partial(r,\theta)}
=\frac{\partial x}{\partial r}\frac{\partial y}{\partial \theta}-\frac{\partial x}{\partial \theta}\frac{\partial y}{\partial r}=r
I^2=\int_0^{\infty}r\exp(-r^2)\left (\int_0^{\pi/2} d\theta \right) dr
=\frac{\pi}{2}\int_0^{\infty}r\exp(-r^2)dr
=\frac{\pi}{4}[\exp(-r^2)]_0^{\infty}
=\frac{\pi}{4}

I=\frac{\sqrt{\pi}}{2}

(解法2)
[tex:0 < \epsilon \int_{D_L} \exp(-x^2-y^2)dxdy=L(\epsilon,R)]
なので、
[tex:L(\epsilon,R)-2J(\epsilon,R)K(\epsilon)-K(\epsilon)^2

*1:司法試験等では試験委員名が明かされるので、その方の学説等を把握するという「試験委員対策」も必要と聞いたことがあります。