アクチュアリー採用問題の解答案(8)

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
から始まった
アクチュアリー採用問題の解答案」
シリーズの8回目です。
今日は、明治安田生命
http://d.hatena.ne.jp/actuary2/20090414/1239720093
を取り上げます。


何点か注意点です。


(a)
基礎の(4)は答えだけでいいのであっさりと書いていますが、
なお、記述式だとこれでは減点の可能性があり、極限の存在をちゃんといわないといけません。
記述の概略を述べると
(解1)
a_1=\sqrt{2},a_{n+1}=\sqrt{2+a_n}
で定義される数列\{a_n\}について
\{a_n\}は単調増加で、かつすべてのa_nが2より小さいことを数学的帰納法で証明することで、「上に有界な数列は収束する」*1ことにより極限の存在が示され、以下、上記の方法を適用しその値が2であることを言う。
(解2)
上記の方法で「候補」が2であることを確認した上で
0<2-a_{n+1}=2-\sqrt{2+a_n}=\frac{2-a_n}{2+\sqrt{2+a_n}}<\frac{2-a_n}{2}
を言って、
0<2-a_{n}<\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}(2-a_1)
より
\lim_{n \to \infty}(2-a_n)=0

(b)
応用の(3)ですがexpの指数は-(x^2+y^2)でしょう。
また、x,y>0の範囲が入っていると思われます。(全平面だと積分すると0)
その前提で解をつけています。

(c)
応用の(4)は
x\frac{dy}{dx}=y+\sqrt{x^2+y^2}
だと思われます。(=のあとがxではなくy
その前提で解をつけています。
xにすると…
http://actuary-math.co.cc/pukiwiki/index.php?test2

(d)
応用の(5)は「実数解」がポイントです。
全部の解は…
http://actuary.upthx.net/download/meijiyasuda.txt

(e)
数学以外の問題には解をつけていません。


その他の注意事項については今までと同じですので、
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100114
でご確認ください。


<数学基礎>
(1)
二項定理
(a+b)^n=\sum_{k=1}^{n} {}_nC_k \cdot a^k \cdot b^{n-k}

a=-1,b=1
を代入して
\sum_{k=1}^{n} {}_nC_k (-1)^k=0…(答)

(3)
\int_0^{\pi/6}\frac{dx}{\cos x}
=\int_0^{\pi/6}\frac{\cos x }{\cos^2 x}dx
=\int_0^{\pi/6}\frac{\cos x }{1-\sin^2 x}dx
=\int_0^{\1/2}\frac{dt }{1-t^2 }t=\sin xと置換積分するとdx=(\cos t )dt
=\frac{1}{2}\int_0^{\1/2}\left(\frac{1}{1+t}+\frac{1}{1-t}\right)dt
=\frac{1}{2}[\log(1+t)-\log(1-t)]_0^{\1/2}
=\frac{1}{2}\left(\log\frac{3}{2}-\log\frac{1}{2}\right)
=\frac{\log 3}{2}…(答)

(4)
求める極限値aとすると、
a=\sqrt{2+a}
2乗して
a^2=2+a
これよりa=2,-1だが明らかに正なので
a=2…(答)

(5)
\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{n+k}
=\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{1+k/n}
区分求積法により、
求める極限値は、
\int_0^1 \frac{dx}{1+x}
=[\log(1+x)]_0^1
=\log 2…(答)


<数学応用>

(1)
t=x^2
とおくと
dt=2xdx

\int_0^{\infty} x^{2n+1}\exp(-x^2)dx
=\frac{1}{2}\int_0^{\infty} t^n \exp(-t)dt
=\frac{\Gamma(n+1)}{2}
=\frac{n!}{2}


(2)
「赤球4個白球1個」の箱が2つの状態を状態A
「赤球5個」「赤球3個白球2個」の状態を状態B
と呼ぶことにする。
交換によりAがAのままに保たれる条件
「2つの箱から赤球同士を取り出す」か「2つの箱から白球同士を取り出す」のいずれかでその確率は
\left(\frac{4}{5}\right)^2+\left(\frac{1}{5}\right)^2=\frac{17}{25}
交換によりBからAに移る条件は、
「『赤球3個白球2個』の箱から白球同士を取り出す」であり、その確率は
\frac{2}{5}

p_{n+1}=\frac{17}{25}p_{n}+\frac{2}{5}(1-p_n)
=\frac{7}{25}p_{n}+\frac{2}{5}

特性方程式
t=\frac{7}{25}t+\frac{2}{5}

t=\frac{5}{9}

これより、
p_{n+1}-\frac{5}{9}=\frac{17}{25}\left(p_{n}-\frac{5}{9}\right)


p_{0}=1なので、
p_{n}=\frac{5}{9}+\frac{4}{9}\left(\frac{17}{25}\right)^n
…(答)


(3)
x=z \cdot \cos \theta,y=z \cdot \sin \theta \, \left( z >0, 0<\theta<\frac{\pi}{2} \right)
とおくと、
\frac{\partial(x,y)}{\partial(z,\theta)}=z
なので、
(Z,\Theta)の同時密度関数g(z,\theta)は、
g(z,\theta)=z \cdot f(z \cdot \cos \theta,z \cdot \sin \theta)
=z \cdot \{4 (z \cdot \cos \theta)(z \cdot \sin \theta)\} \exp(-z^2)
=2z^3 \cdot \exp(-z^2) \cdot \sin(2\theta)

f(z)=\int_0^{\pi/2} g(z,\theta) d\theta
=-[z^3 \cdot \exp(-z^2) \cdot \cos(2\theta)]_{\theta=0}^{\pi/2}
=2z^3 \cdot \exp(-z^2)…(答)


(4)
原方程式は、
x\frac{dy}{dx}=y+\sqrt{x^2+y^2}…(A)
x<0のとき
z=-xとおくと
(A)は
z\frac{dy}{dz}=y+\sqrt{z^2+y^2}
となり、原方程式と同じ形である…(B)
ことに注意する。

x=0のとき、
(A)は、
0=y+\sqrt{y^2}=y+|y|
なので、y \le 0
x=0のときのyの値を-a \,(a \ge 0)…(C)
とおく。

次に
x>0のとき(A)の両辺をxで割ると
\frac{dy}{dx}=\frac{y}{x}+\sqrt{1+\left(\frac{y}{x}\right)^2}
t=\frac{y}{x}…(D)
とおくと、
\frac{dy}{dx}=t+\sqrt{1+t^2}…(E)
(D)より
y=xt
であり、これをx微分すると、
\frac{dy}{dx}=t+x\frac{dt}{dx}
これを(E)に代入して
x\frac{dt}{dx}=\sqrt{1+t^2}
つまり、
\frac{dt}{\sqrt{1+t^2}}=\frac{dx}{x}
\frac{dt}{\sqrt{1+t^2}}=\log(t+\sqrt{1+t^2})+C(Cは積分定数
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100122 参照)
なので、
\log x=\log(t+\sqrt{1+t^2})+C
つまり
t+\sqrt{1+t^2}=kxk>0は定数)
となる。
これより
y+\sqrt{x^2+y^2}=kx^2
x^2+y^2=(kx^2-y)^2=k^2x^4-2kx^2y+y^2
y=\frac{k}{2}x^2-\frac{1}{2k}
x \to 0のとき
y \to -\frac{1}{2k}
より、
-a=-\frac{1}{2k}((C)より)
k=\frac{1}{2a}
つまり、
y=\frac{x^2}{4a}-a
(B)より、これはx \le 0でも(A)の解になっている。

以上のことから、
y=\frac{x^2}{4a}-a \, (a>0)
が求める解である。


(5)
全部合計すると
x^2+y^2+z^2-2x-4y-6z=-14
(x-1)^2+(y-2)^2+(z-3)^2=0
x,y,zは実数なので
x=1,y=2,z=3…(答)

*1:実数の連続性の(同値な)公理の1つ