アクチュアリー試験に役立つ知識(1)

前回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081119
の予告どおり
アクチュアリー試験までもう1ヶ月近くになっているので、試験に役立つ知識をいくつかご紹介していきたいと思います。


今回は、大分前
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20080919
に保留にしていた
(問題:再掲)
「1家族に子供がn人いる確率は[tex:(1-p)p^n \, (n \ge 0,0(3)Nが負の二項分布NB(k,q)に従うとき、Sは負の二項分布NB(k,pq)に従う。
(3)Nが負の二項分布NB(k,q)に従うとき、Sは負の二項分布NB(k,\frac{q}{p+q-pq})に従う。
(2009/7/11 訂正)

上記の問題は(3)のケースで
p \rightarrow \frac{1}{2},q \rightarrow (1-p)
という置き換えで解決することが分かります。
(2009/7/11 訂正)



さて、(命題)の証明ですが、ここでは概略だけ述べます。
アクチュアリー会の教科書「損保数理」(平成21年7月改訂版)のp.p.2−11〜2−12にある次の記述を利用します。
(「損保数理」の改訂に伴いイタリック部分を2009年8月1日に追加・変更。旧版ではp.p.2−8〜2−9)


(a)一定期間内に発生するクレームの件数を表す確率変数N
(b)i番目のクレーム額を確率変数X_i
(c)各X_iは同一の分布Xに従う。
(d)確率変数N,X_1,X_2,\cdotsは互いに独立
という前提の下で、クレーム総額
S=X_1+X_2+\cdots+X_N
の期待値、分散、積率母関数が、それぞれ
E(S)=E(X)E(N)
V(S)=V(X)E(N)+\{ E(X) \}^2 E(N)
M_S(t)=M_N \{ \log M_X(t) \}
となる」


クレームの件数→卵の個数、i番目のクレーム額→i番目の卵から孵る雛の数(孵ったら1、孵らなかったら0)と読みかえます。


つまり、Xが2項分布Bi(1,p)(つまり、成功確率pのベルヌーイ試行1回分)として、
M_X(t)=E(e^{tX})=p \cdot e^t+1-p
となるので、それを利用して、M_S(t)を求めることになります。


さて、もとの「命題」に戻ると、特に(1)が重要です。
このパターンは過去何度か出題があります。


例えば、
(問題)
「年間の入院件数は平均値\lambdaポアソン分布に従い、入院したときの入院者の年齢が60歳以上である確率はpとする。60歳以上で入院する人が年間k人である確率は□である。
k=0,1,2, \cdots)」
といった具合です。
これなど、上記の命題(1)そのままであり、結果を知っていればそれこそ「1秒」で解くことが可能です。


あるいは、損保数理でも以下のような例があります。
(問題)
「ある保険会社の自動車保険(免責金額0)において、1契約につき1年間のクレーム件数は、パラメータ2のポアソン分布に従い、クレーム額は平均10の指数分布に従うことが分かっている。今、免責金額10を設定したとき、ある契約において1年間のクレーム件数が0となる確率を求めよ。」
これは、卵の数がクレーム件数(平均2のポワソン分布)で、
卵が孵る確率
=クレーム額が10以上の確率
=\frac{1}{10}\int_{10}^{\infty} \exp (-\frac{x}{10})dx
=\frac{1}{e}
として、命題(1)を適用です。

「この命題の特に(1)の結果を九九のように覚えるべし」
ということであれば諸手をあげて賛成いたします。