アクチュアリー試験に役立つ知識(4)

今回も前回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081123
に続き、ガンマ分布の問題です。(もちろん過去問から)


(問題)
「確率変数X_1,X_2,X_3の同時密度関数が、
f(x_1,x_2,x_3)=\left{ \begin{array}{cc} \exp(-x_1-x_2-x_3) & (x_1,x_2,x_3>0) \\ 0 & (otherwise) \\ \end{array} \right.
のとき、U=X_1+X_2+X_3の密度関数g(u)は、
g(u)=\left{ \begin{array}{cc} \fbox{1} & (u>0) \\ 0 & (otherwise) \\ \end{array} \right.
である。」


この問題は、
\exp(-x_1-x_2-x_3)=\exp(-x_1)\exp(-x_2)\exp(-x_3)
であることから、
h(x)=\left{ \begin{array}{cc} e^{-x} & (x>0) \\ 0 & (otherwise) \\ \end{array} \right.
とおくと、
f(x_1,x_2,x_3)=h(x_1)h(x_2)h(x_3)
とかけることに気付くとすぐに解けます。
つまり、
実は、X_1,X_2,X_3は独立で、それぞれガンマ分布\Gamma(1,1)(指数分布e(1))に従っている
ということがわかります。
これより、U=X_1+X_2+X_3は、\Gamma(3,1)に従い、
その確率密度関数g(u)は、
g(u)=\left{ \begin{array}{cc} \frac{1}{2}u^2 \exp(-u) & (u>0) \\ 0 & (otherwise) \\ \end{array} \right.
となることが分かります。


これも、前回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081123
の(★)に該当するものであることに注意しましょう。
それゆえ、前回の記述に含めてもよかったのですが、今回、この問題だけを特にとりあげたのには理由があって、皆さんが覚えておいて損のないことを伝えたかったためです。


それは、
アクチュアリー試験の問題は、基本的には、3次以上のヤコビ行列式ヤコビヤン)を使わなくても解けるようになっている
ということです。


もちろん3次以上のヤコビ行列式を使って解いてもよいのですが、再生性などを使ってそれを回避できる構造がちゃんと用意されている次第です。
(過去問題集の解答では、このことを知ってか知らずか、そういう構造に触れられることはまずありません。上記の問題も真面目に(?)3次のヤコビ行列式を使って解かれています。)


アクチュアリー試験で3次(以上)の行列を使わないといけない可能性があるのは、モデリングの回帰分析、時系列解析で係数を求めるために連立一時方程式を解く(まずn=3)か、マルコフ連鎖で遷移行列を扱うとき(大体n=4)位に限定されるといってもよいでしょう。