アクチュアリー試験に役立つ知識(6)

今回は、ガンマ分布とガンマ関数に関する問題をとりあげます。

ガンマ関数は、
\Gamma(x)=\int_0^{\infty} t^{x-1} \cdot \exp(-t)dt
で定義されるもので、前回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081127
にも述べたように、アクチュアリー試験においては
(1)\Gamma(x+1)=x \cdot \Gamma(x)
(2)x=n(正の整数)のとき、\Gamma(n)=(n-1)!
(3)\Gamma(\frac{1}{2})=\sqrt{\pi}
の性質について押さえておくことが望まれます。

(2)より直ちに、
(2’)mは0以上の整数とするとき、
\int_0^{\infty} x^m \exp(-x)dx=\Gamma(m+1)=m!
がいえます。


さて、いつものとおり過去問からです。
(問題)
「確率変数X,Yは独立で、共に平均\lambdaの指数分布に従う。
このときX+Y
歪度\frac{\mu_3}{\sigma^3}\fbox{1}
尖度\frac{\mu_4}{\sigma^4}\fbox{2}
である。
ここに、
\mu_k:X+Yの平均\muのまわりのk次積率
\sigma:X+Y標準偏差
とする。
(A)1
(B)\sqrt{2}
(C)2
(D)2\sqrt{2}
(E)3
(F)3\sqrt{2}
(G)6
(H)6\sqrt{2}
(I)24
(J)24\sqrt{2}
(K)30
(L)30\sqrt{2}


大分前の回の記事
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20080705
をお読みになった方であれば、
この問題では、
最初に選択肢に注目すべき
ということにお気づきになると思われます。


選択肢に\lambdaが入っていないということは、
\lambdaとして何を選んでもよい
ということを意味します。


当然計算の一番楽な\lambda=1を選ぶべきです。
このとき、
Z=X+Y\Gamma(2,1)に従い、\mu=2,\sigma^2=2であり、の密度関数f(z)は、
f(z)=z \cdot \exp(-z) \, (z>0)
となります。


次に、3次と4次の積率を求めますが、ここでガンマ関数の性質(上記の(2’))を用いるのがよいでしょう。
\mu_3=\int_0^{\infty} (z-2)^3 \cdot z \cdot \exp(-z) dz
=\int_0^{\infty} (z^4-6z^3+12z^2-8z) \cdot \exp(-z) dz
=4!-6 \cdot 3!+12 \cdot 2!-8 \cdot 1!
=24-6*6+12*2-8=4
\frac{\mu_3}{\sigma^3}=\frac{4}{2\sqrt{2}}=\sqrt{2} \cdots(B)

\mu_4=\int_0^{\infty} (z-2)^4 \cdot z \cdot \exp(-z) dz
=\int_0^{\infty} (z^5-8z^4+24z^3-32z^2+16z) \cdot \exp(-z) dz
=5!-8 \cdot 4!+24 \cdot 3!-32 \cdot 2!+16 \cdot 1!
=120-8*24+24*6-32*2+16=24
\frac{\mu_4}{\sigma^4}=\frac{24}{4}=6 \cdots(G)


次回はガンマ関数から派生するベータ関数について考えます。