アクチュアリー試験に役立つ知識(8)
今回はコーシー・シュワルツ(Cauchy-Schwarz)の不等式をとりあげます。
コーシー・シュワルツの不等式とは、
「実数に対し、
かつ、等号の成立は、ある定数が存在して
とかける場合のみ。」
というものです。
高校数学で習ったと思われる事項ですが、これを使わずにもっと程度の高い(?)道具に手を出すケースが少なくないようです。
この問題の適用例を考えてみましょう。当然過去問からです。
(問題)
が互いに独立でいずれも母平均の不偏推定量とする。
(1) がの不偏推定量であるために必要なの条件を求めよ。
(2) 各の分散が母分散であるとする。がの不偏推定量であるとき、を最小とするおよびの最小値を求めよ。
まず(1)ですが、
が成り立つので、
・・・(a)
が答えです。
問題は(2)です。
(∵各は独立)
となるので、
(a)の条件の下で、
の最小値を考えればよいことになります。
コーシー・シュワルツの不等式より、
で等号は、
ある定数が存在して
とかける場合のみなので、
のとき最小値をとり、
そのとき、
であることがわかります。
過去問題集の答えでは、これをラグランジュ(Lagrange)の未定乗数法を用いて解いています。
むろんそれでも解けないことはないのですが、
コーシー・シュワルツの不等式を使うと早くかつ確実に解けます。