アクチュアリー試験受験の知恵(12)
今回は「状況に応じた解き方」というテーマで考えます。
野球の打撃練習では、単にバットを振るだけではなく、「初回、同点、ノーアウト、ランナー2塁」「最終回(9回)、1点差で負けている、ワンアウト、ランナー1・3塁」などの状況を設定した練習が行われることがあるといいます。
アクチュアリー試験(だけではないのですが)でも、残り時間その他によって違った「解き方」が適用できる余地が生じることは当然のことです。
前回とりあげた問題
「
箱の中になる番号のついた札が1枚ずつ、合計11枚入っている。この箱から非復元抽出によって無作為に3枚の札を取り出したときに得られる番号の和の分散は□である。
(A)
(B)
(C)8
(D)10
(E)20
(F)24
(G)
(H)30
」
について
「有限母集団からの非復元抽出」
http://actuary.upthx.net/pukiwiki/index.php?1.1.2.1.4.%C9%B8%CB%DC%CA%BF%B6%D1%A1%A6%C9%B8%CB%DC%CA%AC%BB%B6%A1%A6%C9%D4%CA%D0%CA%AC%BB%B6%A1%A2%CD%AD%B8%C2%CA%EC%BD%B8%C3%C4#r6d8e94a
を知らなかったとして、
(a)30分くらいかけてもいいから確実に正解を得たい
(b)5分以内に答えを出したいが、単に8個の答えから出鱈目に選ぶ(この場合は確率よりは確率の高い答えを出したい。
(c)15分〜20分で何とか正解に近づきたい
というそれぞれ状況でどう「解」けばよいかを考えてみます。
(a)ですが、
11個の数値から3個を選ぶ選び方は、とおりなので、これらを全部書き出し2乗和を計算すれば30分あれば可能でしょう。
(書き出し+2乗和の計算に1個10秒かかっても、10×165=1,650秒=27分30秒)
(b)ですが、
(ア)1枚の札を取った場合の分散が10で、どう考えてもそれより分散が大きくなるはずだから(A)〜(D)以下の答えは却下
(イ)3枚の札を復元抽出で取った場合の分散が10×3=30で、これとは等しくないはずだから、(H)も却下
(ウ)2枚の札を復元抽出で取った場合の分散は10×2=20で、これよりは大きくなると考えられる、(E)も却下
と考えて、(F)か(G)のどちらかを選ぶ
ことであれば5分以内に可能でしょう。
(c)については、公式に頼らずこの場合だけの計算を落ち着いてやり直すことが考えられます。
をそれぞれ、1枚目〜3枚目の札の数とし、とします。
が求めるものです。
このとき、
これより
よって
・・・(F)
となります。
これらのうち(a)は普段の勉強では絶対行ってはいけない方法です。もっと言うと、こういう解法を避けるためにこれまでいろいろと述べてきたところです。
ただし、最後の土壇場の場面、つまり
「時間が30分あまっていてこの問題の5点があれば合格圏に届く」
ということであればこういう解法もあるということを覚えておいて損はないでしょう。
なお、アクチュアリー試験では、1時間経つと退室可能になります。
この時点であきらめて帰る(欠席だと所属会社に知れるので、受けるポーズだけとる場合もある)人が少なからずいますが、たとえ合格は難しいと悟っても、残りの2時間はこういう少ない知識から解答をひねり出す
いろいろな解法の「シミュレーション」
をするまたとない機会であり、次年度(以降)に生かされると思います。