アクチュアリー試験受験の知恵(13)

今日は「真ん中と端」というテーマで述べてみます。

「勝負どころで迷ったらストレート(まっすぐ)」
というのがプロ野球パ・リーグパシフィック・リーグ)の不文律なのだそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%B7%9D%E7%90%83%E5%85%90#.E6.B8.85.E5.8E.9F.E7.99.BA.E8.A8.80.E3.81.A8.E3.81.9D.E3.81.AE.E5.BE.8C.E3.81.AE.E3.83.96.E3.83.AC.E3.82.A4.E3.82.AF.EF.BC.882005.E5.B9.B4.EF.BC.89

これになぞらえると、アクチュアリー試験では、
「迷ったら真ん中か端」
ということが使えることがあります。
といっても、もちろん5拓の中で3番を選ぶとかそういうことではありません。

例によって、過去問を見てみましょう。

「ある試行において、事象Eが起こる確率をpとする。この試行を独立に10回繰り返して、pに関する次の仮定を検定したい。
帰無仮説H_0:0.4 \le p \le 0.6
対立仮説H_1:p<0.4 \, or \, p >0.6
棄却域をW={0,1,9,10}とするとき、帰無仮説が棄却される確率が最大となるようにp(0.4 \le p \le 0.6)を選ぶとする。このとき帰無仮説が棄却される確率は□である。
(小数点以下第4位を四捨五入して、小数点以下第3位まで求めるものとする。)
(A)0.042
(B)0.044
(C)0.046
(D)0.048
(E)0.050
(F)0.052
(G)0.054
(H)0.056

この問題は題意が取りづらいかも知れませんが、純粋に数学的に考えたときには、
p(0.4 \le p \le 0.6)
のとき、発生確率が0,1,9,10のいずれかである確率つまり、
f(p)=p^{10}+10p^9(1-p)+10p(1-p)^9+(1-p)^{10}
を最大にするpを求めよ。」
ということになります。

f(p)微分して0になるpを求め、増減表を書く
というのが、普通の解き方なのですが、pの10次式を微分して解こうというのは中々大変です。
この問題では、微分するとうまく項がキャンセルされるのですが、そこに辿りつけない可能性も十分考えられます。

まず容易に気付くことは、
f(p)p=0.5について対称である。」
ということです。

したがって、真ん中か端以外で最大値をとるとすればグラフは(例えば)
図A

のような形になります。
このとき、極値が少なくとも3つあることになり、f'(p)pの9次式)は、
(p-\alpha)(p-\beta)(p-\gamma)×(pの6次式) ((0.4 \le \alpha,\beta,\gamma \le 0.6)かつ\alpha+\beta=1
ような形に因数分解できないといけないことになります。
その上で、後者の6次式がp(0.4 \le p \le 0.6)に解を持たないことを確認しなければなりません。

もちろん、前
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20080815
から何度も何度も申し上げている
「1問10分」
という制限の中でここまで計算するのは非常に困難だし、時間制限を考慮に入れなくてもこのような簡素な問題の中で、ここまでの仕掛けを出題者の側が行っていると考えるのは少し無理があるでしょう。

したがって、グラフの形は、
図B


図C

のようなものになると考えるのが自然です。

このことから、微分をせずに
p=0.4

p=0.5
で値の比較を行います。

f(0.4)=0.048 \cdots ,f(0.5)=0.021 \cdots
なので、(D)0.048が答えになります。


ちなみに
図Bがy=f(p)のグラフで、
図Cは、y=0.07-f(p)
図Aは、y=0.05-(p-0.45)^2 \cdot (p-0.55)^2 \cdot 500
のグラフでした。(いずれも0.02 \le y \le 0.05で見ています)


もちろんこれはある程度「推測」に頼った解法であり、正しくない(最初のグラフのような形になっている)可能性は否定できません。
ただし、このような考察を行っておくことは、普通に解いた答えがあっているかどうかを確かめる上でも有効になります。