2008年度アクチュアリー試験から(4:最終)
飛び飛びになっていましたが、「2008年度アクチュアリー試験から」シリーズを完結させてたいと思います。
今回は、問題3の(1)の○8*1(自由度を求める部分)について考えてみます。
まず、
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20081224#c1230201238
でも述べたように適合度の検定自体はしばしば出題されています。
したがって今回出題されたこと自体は想定内の事柄です。
ただし、問題は自由度の算出です。
普通は、区分の数−1が自由度になるのですが、
この問題では、
「理論分布のパラメータをいくつかデータから点推定した場合は,自由度がそれだけ減る,と考える.例えば,正規分布への当てはめの場合は,平均と分散の二つ減って,自由度となる。」
ということが知られている
(東北大学服部哲弥先生のウェブサイト「講義 − 数理統計学」
http://www.math.tohoku.ac.jp/~hattori/toukei.htm
の2004年度の講義録「確率・統計入門」
http://www.math.tohoku.ac.jp/~hattori/toukei.pdf
p55上から9行目注(iii))
(2010/4/15 更新)
慶應義塾大学服部哲弥先生のウェブサイト「数理統計学/統計数学 服部哲弥」
http://web.econ.keio.ac.jp/staff/hattori/toukei.htm
の2004年度の講義録「確率・統計入門」
http://web.econ.keio.ac.jp/staff/hattori/stat05.pdf
p53注44(ii))
ので、
結果的に6(プール後の区分の数)-1-1(ポワソン分布のパラメーターを推定しているので)で4が自由度になります。
ところが、
上記の事実は統計の教科書とされる本にはなく、演習書(2巻組の下巻)でもかなり深読みして初めて表れる事柄
であることに留意が必要です。
したがって、指定の書籍を読む場合は、隅々までよんでいないと分からない事項になります。*2
適合度の推定自体の出題頻度が低いのにさらにこのような事項を求めるのはかなりハードルが高いとも考えられます。
ただし、1つだけ救いがあります。
この問題では、わざわざ
「特性の個数をプールする(特性の種類数を調整する)必要があることおよび分布の母平均として推定値を用いることに留意すると」
と強調し、かつ、(1)で
「については、推定値を用いずに決まるとする」
と普通は書かないことを書いていることから何かを感じとらせようという意図が見えます。
独立で同じ正規分布に従うから得られる標本分散の自由度は1下がるのですが、この問題でも
自由度を1下げることを求めている(少なくとも普通と同じ自由度ではない)
ということを「類推」することは不可能なことではないと考えます。
つまり、「空気を読む」問題ということになるかも知れません。
「指定の書籍を隅々まで読む」か?
「指定の教科書以外も幅広く読む」か?*3
「空気を読む」か?
皆さんはどれ?*4を選択されますか?
さて、冒頭でも述べたように「2008年度アクチュアリー試験から」シリーズは今回が最終回です。次からは新しいシリーズを始めます。