アクチュアリー試験における複合分布の利用(1)

今回と次回の2回で読者の方からアクチュアリー試験の過去問題に関してご質問をいただいた件
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090711#c1256642409
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090711#c1256643338
関連して複合分布の利用という点で考えます。


今回は、1997(平成9)年の問題からです。
「あるタクシーの運賃は初めの1kmはA円、その後は1km増すごとにB円追加されるものとする(1km未満の距離は1kmに切り上げる)。
1日の乗車人数Nは、平均値\mu(人)のポアソン分布に従い、一人あたりの乗車距離は平均値\lambda(km)の指数分布に従うとするとき、一日の売り上げの平均値を求めよ。なお、このタクシーには一度に一人の客しか乗車しないものとする。」


http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090711
で、
クレームの件数→1日の乗車人数
i番目のクレーム額→i番目のお客の売り上げ(X
と読み替えると、
求める一日の売り上げの平均値E(S)は、
E(S)=E(N)E(X)
とかけることが分かります。


E(N)=\lambdaですから、あとはE(X)を求めればよいことになります。
さて、Y(km)を平均\lambdaの指数分布とし、Z((km)を1km未満を切りあげた距離数とし、W=Z-1とすると、Wは、
P(W=w)=\int_{w}^{w+1} \frac{1}{\lambda} \exp \left( -\frac{y}{\lambda} \right) dy
=\left[ - \exp \left( -\frac{y}{\lambda} \right) \right] _{w}^{w+1}
=p(1-p)^w
(ただし、p=1- \exp \left( -\frac{1}{\lambda} \right)
となり、幾何分布G(p)
にしたがうことになります。


このとき、
E(W)=\frac{1-p}{p}=\frac{\exp(-1/\lambda)}{1-\exp(-1/\lambda)}=\frac{1}{\exp(1/\lambda)-1}
となります。
(参考
http://actuary.upthx.net/pukiwiki/index.php?1.1.1.2.4.%CE%A5%BB%B6%B7%BF%B3%CE%CE%A8%CA%D1%BF%F4%A4%CE%CE%E3#g92b35bf


一方
X=A+B(Z-1)=A+BW
なので、
E(X)=A+\frac{B}{\exp(1/\lambda)-1}


以上をまとめると、
E(S)=\mu \left( A+\frac{B}{\exp(1/\lambda)-1} \right)
となります。