5.√xの定義
さて、問題のの定義について考えるのですが、その前にxの定義をしなければなりません。
木村先生は、上記のブログで
前後の文脈を補い,必要に応じて記号を導入して,正しく述べることです.
例えば「√xの定義を述べよ」と言われたときに,「xを実数とする」などのように文脈を補うこと,そして,xが正,0, 負の場合を尽くして,正しく解答する.
と言われていますが、これは、特に中学生、高校生の方々には、すぐにはできない話だと思われます。
実際にその後で
数学科の4年次のセミナなどでも口を酸っぱくして指導することの一つです
と書かれています。*1
恐らく「の定義」を出題された高校生は、「xの定義」に戸惑ったのではないかと考えます。
マイナスの数に対しては普通のような書き方はしないことが多いのですがすることもあります。
また、高校1年生のこの段階では実数でない数(虚数、複素数)も習っているはずなので、がそのような数の場合どうすればいいのか迷ったとも考えられます。
彼らは
を実数とするとき、を解け
という問題であれば、全く苦も無くクリアできた可能性もあったのではないかと思われます。*2
以下を正と「限定」します。
このときを「二乗してになる2つの数」ということで定義しても、即「よくない定義」ということにはならないと考えます。
「(3)人によって違うものを特定してしまう可能性のある『定義』」に該当しそうですが、「2つの数」を一まとめにして(2つの数から構成される1つの集合として)指定すればここもクリアできます。(この段落の後半で述べていることに該当します)*3
例えばでAさんが2を想起し、Bさんが-2を想起するとまずいということもありますが、その場合は別の記号を定義すれば解消可能で、が2つの数を定義しているということが「よくない定義」には直結しないと考えます。
*1:なお、このことについて木村先生にtwit http://twitter.com/actuary_math/status/8165819322 したところ、「文脈を補うのは確かに難しいと思います.ただこれは,抽象概念を扱うとか,複雑な≡操作を行うとか言う難しさではなく,自分で正しいと思う事を主張する,という経験不足から来ている事だと思います.指導が伴えば,中高生にも出来ると思います.いきなり√xの定義を正しく述べるとか,自分の言っていることが論理的に首尾一貫してないことに直ちに気がつくとか,そういうことを多くの中高生に期待することはできないと,私は思いますけども.」 とのお言葉 http://twitter.com/iwaokimura/status/8178654199 http://twitter.com/iwaokimura/status/8178895639 を頂戴しています。
*2:両辺2乗するとでこれを解くとですが、だとなので不適∴
*3:1つの記号で2つ以上の対象を指定することはごく一般的に行われます。例えば