続・(損保の)アクチュアリー2次試験
前回
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100531
のエントリーの後
(1)いわき(@s_iwk)さんが2回目のブログエントリー
http://iwk.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/22-9278.html
(2)まいす(@maisudai)さんがブログエントリー
http://maisu.blog.shinobi.jp/Entry/957/
(3)むしまんさん(@mushiman2)からTweet
http://twitter.com/mushiman2/status/15172208763
といろいろな方から反響をいただいたので、こちらの方でも何点か補足いたします。
1.むしまんさんのTweetについて
私は勉強範囲はテキスト等の試験範囲のみ、所見は無難にプラスアルファ程度で十分、と考えてます。
ですが、後半の所見については賛成です。というよりも時間的に「無難にプラスアルファ程度」を書くので精一杯です。
前半ですが、生保と損保では違いがあるのかも知れません。
損保の場合は、最近の改正事項それもかなり細かい部分がしばしば出題対象になります。(特に損保2(損保会計))
前回の例だとソルベンシーの改正については、まず今年の試験で狙われる可能性が極めて大です。(などと私が書くまでもなく受験者の皆様は、対策を打たれているでしょうが)
2.海外情報
海外でCEIOPSの例はさすがにやり過ぎでした。
もちろん日本の試験なので海外の制度の問題それも最新の事情等が試験で聞かれることはありません。
論文問題で、ごくごくさわりでよいので海外の話を書き加えると上記のプラスアルファになりうるという意図でした。
そういうのに適切な日本語の資料は、いわきさん御紹介のジャーナル・会報別冊等の他に、例えば
「欧州の先進的な保険リスク管理システムに関する研究会」議題・資料
3.その他の情報
(1)前回書きもらしましたが、「損害保険会社の保険計理人の実務基準」は最近変わったばかり
http://www.actuaries.jp/info/sonpo_jitumukijun_H22.html
のでこれも要注意です。*1
(2)いわきさんがブログで挙げられている
「生保商品の変遷〜アクチュアリーの果たした役割〜」(isbn:4892933813)
に相当する損保の「背景」や「考え方」を知ることのできる本(で今入手可能なもの)をすぐには思いつきません。
法令の改正をパブリックコメントに諮る際などに資料として背景の説明が出てくることがあるので(ソルベンシーを例にとると
http://www.fsa.go.jp/news/19/hoken/20080207-1.html
の(参考2)等)、
そういうのを丹念に拾い上げていくしかないと思います。
御存じのとおり平成8年に半世紀ぶりに保険業法が改正されましたが、そこから10年ちょっとの間に(ある意味)そのときの改正以上に大きな変化が生じています。
(3)他には
社団法人生命保険協会発行の
「生命保険会社のディスクロージャー〜虎の巻」 2007年版
http://www.seiho.or.jp/activity/publication/tora2007.html
が役立つかもしれません。
業界人以外が使わないような用語等を簡潔に解説してくれているところが(短文記述問題等に)役立ちます。(当然生保と損保は違う部分もあり、損保としては共通部分しか利用できないのですが*2)
2007年度版が最後なのが本当に残念です。
4.文章を「作る」訓練
あと前回書き忘れたのですが、文章を書く訓練と共に文章を「作る」訓練をされるとよいかも知れません。
鉛筆(シャープペンシル)を使って書く訓練の必要性は前回のとおりですが、これだけでは文章を「作る」量が不足しがちです。
「作る」訓練は、鉛筆を使う必要はなくPCのキーボードをたたけば十分です。
具体的な訓練の場としては、例えば、社内外の研究会等の報告書、ブログ等が考えられます。
以上
*1: http://www.actuaries.jp/comm/sonpo_jitumkjn.html で紹介されている実務基準へのリンクは最新の改正が反映されていないので更に要注意
*2:逆に生保の試験には当たり前すぎて使えないかもしれませんが
3.まとめ
いろいろと書いてしまいましたが、
2次試験については、毎年一定割合(損保だと、概ね2割前後)の合格者数が出ているのも確か
です(1次試験の一部の科目のように、この比率が年によって4割になったり1割未満になったりはしない)。
いわきさんのブログの記述、留意事項及び本稿の内容等を踏まえた上で、
諦めずに取り組めば必ず道は拓ける
と思います。
受験者の皆様が、1次試験のみならず2次試験も無事クリアされることをお祈りいたします。
以上
2.論述問題について
まず、いわきさんも述べられていますが
アクチュアリージャーナル第66号(2008年8月)の
「第2次試験に向けた勉強を進める上での留意事項」(以下「留意事項」)
は必読です。*1
(2010/5/31 21:13 JST 追記
まいすさんから
(1)当該留意事項がアクチュアリー会のサイトに残っている
http://www.actuaries.jp/examin/guide.pdf
こと
(2)説明会の資料が会員限定サイトに残っている
(事務局からのお知らせ→お知らせ一覧→第2次試験受験者向け説明会資料(2008年11月12日))
とのご指摘
http://twitter.com/maisudai/status/15102456389
がありましたので記しておきます。)
以下、留意事項といわきさんのブログで触れられていない点について主に述べます。
(1)論述の時間と得点について
しばしば忘れがちなこととして論述にかけられる時間の問題があります。
御存じのとおり、試験時間は3時間ですが、上記のとおり知識問題(といっても単なる語句の穴埋めだけではなく、計算や短文記述などバラエティーに富む)もあるので、論述にかけられる時間はせいぜい70〜80分がいいところです。
この時間内で
題意の把握→論理の構成→実際の書き込み→推敲
まで行わなければならず、実際に鉛筆(シャープペンシル含む。以下同じ)をつかって書ける時間はせいぜい1時間がいいところです。
一旦書き始めたら大きく構成を変更できないのはもちろんですが、そもそも、
これだけの短時間で真に斬新なアイデアを生み出すことが極めて困難
です。
つまり、ごく穏当な論述になってしまうことが少なくありません(あまりに独自のものをと考え過ぎると、独りよがりの論述になり試験官の心証を大いに損ねる危険性が極めて高いです)。
よくできる方は別として、論述では穏当な内容でせいぜい5割(20点/40点)程度で、そのかわり知識問題では7割(42点/60点)以上得点し、合計で60点を少し上回るというのが、合格者の平均的な姿ではないかと考えます。(もちろん「普通」といってもそれほど簡単ではないのですが…)
(2)「論」を述べる前に
論述問題は、
「評論」が求められているわけではない
ことに注意する必要があります。
ブログ(書籍も?)ではときどき、保険に関してあまり造詣が深くないと思しき方が、十分な知識の裏付けのない「評論」を展開されているのを見かけます。
これと同じことをアクチュアリー試験でやるのはまずいと考えます。
つまり、正確でできれば豊富な*2な知識の裏付けを試験官に示してから論を進めるべきだし、当事者としてその問題に取り組むつもりで(実現可能な)「解」を提示する必要があると考えます。
いわきさんが上記のブログエントリーで述べられている
「ソルベンシーについての所見を問う問題」
を例にとると、もちろん「現行ソルベンシー・マージン比率の計算方法について長々と書かれ」るのは論外ですが、かといってそういう知識を飛ばして、いきなり「(日本の)ソルベンシー・マージンについてはかくあるべし…」といった実現性の乏しい「評論」を並びたてられても試験官は困惑すると考えます。
この問題だと、例えば
(a)知識面
○ソルベンシーとは何か
○日本におけるソルベンシー・マージン規制制定(平成8年の保険業法改正)の経緯
○現行ソルベンシー・マージン基準の概要と課題
○ソルベンシー・マージン規制の改正の概要
○欧州のソルベンシーIIの概要
等を踏まえた(書いた)上で、
(3)論述の具体的な対策
(a)論述テーマの予想と論点の整理
知識の習得の過程において、最近の法令の改正動向その他については自ずとキャッチしているはずなので、論述テーマについては、ある程度予想がつくと思います。
それら予想されたテーマについて自分で論点を考えてみて実際に論述してみることをお勧めします。
もちろん上記のように前提となる知識を踏まえなければならないため、それなりに準備が必要になります。
例えば上記のソルベンシーについては本番でも出題が予測される内容の一つで、それぞれの項目を列挙するのは簡単ですが、細かい中身については、いろいろと調べる必要が出てくると思います。
(これについては、例えば
いわきさんのブログの別のエントリー
http://iwk.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-ad08.html
とそこで示されている各リンクの記事等が参考になると思います。
)
(b)論点の複数人での検討
以上のような項目の検討については、可能であれば複数の受験生で行うとよいと思います。私も他社の人とそういう論点検討を行い、自分の思ってもみなかった論点を気づかされたことが多々ありました。
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100414
でも述べましたが、受験者同士のネットワーク形成が大事になってくると思います。
(c)実際に書いてみる練習
以上の個人(&グループでの)論点整理を踏まえ、答案を自分の手で書いてみる(PCのキーボードを打鍵するのではなく)必要があります。
上記のようにいくら出題内容が予測でき、論点が整理できたとしても70〜80分で書ける量は限られている(模範解答を「そのまま」書くと絶対に時間が足りない!)ので、どこまでの内容が書けるのかを自分の手で把握することが必要だと考えます。
また、(自分も含めてですが…)普段鉛筆で文字を書く機会はほとんどなくなっていると思うので、忘れている漢字等を思い出すいい機会でもあります。
(d)その他
表記面についてはいわきさんのブログでも述べられていますが、その他、九州大学の田口雄一郎先生が書かれている
「採点について」
http://www2.math.kyushu-u.ac.jp/~taguchi/nihongo/gakusei/grading.html
等も参考にされるとよいと思います
1.論述までの準備(知識面)
2次試験は上腕三頭筋が痛くなったりした記憶がある*1ほどの記述量があるのは確かで、どうしても「論述」に光があたってしまいがちですが、実は
論述以前に知識面を充実すべき
と考えます。
例えば、受験要領
(去年のものは
http://www.actuaries.jp/examin/H21exam/H21-all.pdf
です)
をご覧になると分かりますが、
昨年から
全体の6割程度が『アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門的知識を有するかどうかを判定する問題(第I部)』
全体の4割程度が『アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門的知識に加え問題解決能力を有するかどうかを判定する問題(第II部)』
で構成されていて、
「第I部、第II部のいずれかでも最低ライン(第I部・第II部ごとの満点の40%を基準として試験委員会が相当と認めた得点)に達していない場合は、不合格」
とされます。
このように第I部(知識問題)と第II部(論述問題)に分かれた出題は、少なくとも損保では前から行われていて*2、それが明文化されたに過ぎないと理解しています。(ただし、生保・年金はそうはなっていなかったと思います)
つまり、いくら論述問題ができても知識問題ができなければアウトということになります。もっとも、これはほとんどナンセンスな話で、以下で述べるように、知識の裏付けがあってはじめていい論述ができると考えます。
したがって、問題は
知識をどう身につけるのか
ということになります。
もちろん1次試験と同様に
「過去問題をみて出題されやすいところを探り、該当箇所を教科書で押さえる」
ことが基本になるのですが、2次試験ではそれだけでは必ずしも十分でありません。
それは、2次試験で必要とされる知識は日々進化・拡大しており(近年進化のスピードが更に加速)、過去問・教科書の記述が文字通り過去のものになり、ときには間違いにすらなる可能性もあるからです。
そのような意味で、日々の知識のアップデートが必要になってきます。当然(損害)保険会社に所属していればいろいろな情報が流れてくる(回覧等)のですが、それだけでは必ずしも十分とはいえず、例えば以下のようなサイトや書籍を能動的に訪問・購読することが望ましいと考えます。
(1)金融庁のサイト
金融庁のサイトで掲載されている、法規の情報及び次の法規集全般に言えることですが、
可能な限り「原典」に当たる
ようにされるとよいと考えます。
つまり、教科書に「○○法第△条」と書かれていてもそれで満足せず、以下のサイト等で都度ご自身で確かめることが望ましいと考えます。当然手間はかかりますが、そうした方が頭に残りやすいです。
(a)トップページ
(b)報道発表資料
(e)告示一覧
http://www.fsa.go.jp/common/law/kokuji.xls
(エクセル内で各告示のPDFにリンク)
(f)保険会社に係る検査マニュアル
(h)保険会社向けの総合的な監督指針
(j)同別紙様式集(PDF)
(k)新着情報配信サービス
(2)法規集
(a)保険関係法規集(byいわきさん)
http://www.nn.em-net.ne.jp/~s-iwk/
法律で参照される府令がリンクで示されていたり、複雑な多重括弧が色分けされていたりと、至れり尽くせりです。告示がまとまっているのも貴重です。(今は上記の金融庁の「所管の法令等」で告示が見られるようになりましたが、その昔はそれもなくここが唯一のよりどころでした)
(b)法令データ提供システム(電子政府:e−gov)(上記(a)「保険関係法規集」にもある例)
○保険業法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H07/H07HO105.html
○保険業法施行令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H07/H07SE425.html
○保険業法施行規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H08/H08F03401000005.html
(c)法令データ提供システム(電子政府:e−gov)(上記(a)「保険関係法規集」にない例)
○地震保険に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S41/S41HO073.html
○地震保険に関する法律施行令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S41/S41SE164.html
○地震保険に関する法律施行規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S41/S41F03401000035.html
○租税特別措置法(第57条の5:保険会社等の異常危険準備金)*3
http://is.gd/cwMNg
○租税特別措置法施行令(第33条の5:保険会社等の異常危険準備金)*4
http://is.gd/cwMOm
(d)国税庁長官通達(法令解釈通達 法人税関係 個別通達)
○平成15年12月19日付課法2-24
「損害保険会社の所得計算等に関する法人税の取扱いについて (法令解釈通達)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/031219/01.htm
(3)ニュース
余談ですが、官報以外の記載内容(特に記者の「私見」が入っている部分)は必ずしも正確ではないので要注意です。
(a)官報(過去30日分閲覧・ダウンロード可能です)
(c)Yahoo!ニュース 保険業界
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/insurance_companies/
(d)保険毎日新聞
(見出しとトップ1記事だけですが…)
http://www.homai.co.jp/
(4)書籍
(a)「損害保険会計と決算」(損保総研)
http://www.sonposoken.or.jp/content/view/full/3064
損保2(損保会計)受験者必携の書籍のみならず合格後も役立つ書籍*5です。
(毎年更新されるため、教科書の"outdatedness"を補完してくれます)
(5)海外の情報
余裕があれば、海外の関連サイト
(例えばソルベンシーIIなら
CEIOPS(Committee of European Insurance and Occupational Pensions Supervisors)
http://www.ceiops.org/ )
なども適宜当たるとより効果的です。
ただし、当然ながら膨大な英文と格闘しなければならないですし、これまで述べた国内の関連サイト・書籍だけでも十分に「おなかいっぱい」になると思います。
費用対効果の大きい方法として、まずは、Twitter上で、Yosuke Fujisawa(@actuaryjp)さんをフォローされることをお勧めします。
(6)昔との比較
前記のとおり、必要とされる知識量は、昔と比べてどんどん増しているのですが、
(a)インターネットの発達によって昔より楽に情報を得られるようになったこと
(b)人目にほとんど触れることのない「文献」からの出題がほとんどなくなったこと
は昔より有利な点として挙げられます。*6
(損保の)アクチュアリー2次試験について
しばらくぶりのエントリーですが、今日はいわき(@s_iwk)さんのブログのエントリー
http://iwk.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/2-8042.html
を受けて私の方でも2次試験についてエントリーを立ててみることにしました。
本ブログは主に1次試験特に数学の受験者を対象とするもので、以下、既に全科目受かった方、あるいは今2次試験に挑戦されている方には当たり前のことになってしまうのかも知れないのですが、まだ2次試験の問題を見られたことのない方などには、何がしかの参考になれば幸いです。
なお、
(a)(私も)試験委員はやったことがないこと
(b)損保で2次試験を受けたので、以下損保に関する記述が中心となり、生保・年金には当てはまらない部分もあること
は御了解ください。
アクチュアリー試験の歴史(暫定版)
今日は、次の各Tweetsからこのようなエントリーを立ててみました。
http://twitter.com/s_iwk/status/13169008308
昭和時代の試験は1科目で準会員 RT @actuary_math: 1科目通ってなれるのは研究会員です。準会員になるには1次5科目全部受からないといけません QT @call_me_nots RT @maznami アクチュアリーの準会員って、まだ試験一科目通ればなれますか?
http://twitter.com/riskywheel/status/13169586772
部長格の人になんでこの人が準会員って人がいるのはそのせいか。納得。RT @s_iwk: 昭和時代の試験は1科目で準会員 RT @actuary_math
いわき(@s_iwk)さんのご指摘のとおり、今は1次試験に全部合格しないと準会員になれない(4科目までの合格は研究会員)ですが、昭和時代は1科目でも合格していれば「準会員」と呼ばれていました。
このこと自体は、「呼称」だけの問題で、上記の(Risky dice(@riskywheel)さんが御判断された)ような目的か、保険業法施行規則の少額短期保険業者の保険計理人の要件*1
で
http://www.nn.em-net.ne.jp/~s-iwk/2010-04-01/kisoku/a211_49.html
第211条の49(保険計理人の要件に該当する者)
法第272条の18において準用する法第120条第2項に規定する内閣府令で定める要件に該当する者は、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当する者とする。
一 社団法人日本アクチュアリー会の正会員であり、かつ、保険数理に関する業務に3年以上従事した者
二 社団法人日本アクチュアリー会の準会員(資格試験のうち5科目以上に合格した者に限る。)であり、かつ、保険数理に関する業務に5年以上従事した者
(太字筆引用者) (2010/5/3 この行修正)
とわざわざ断り書きを付けている理由を知る目的くらいにしか使えないトリビアですが、アクチュアリー試験範囲の微妙な変更等は過去問を見る上でも有益な情報だと思いますので昭和後期からのアクチュアリー試験の歴史を纏めてみることにしました。
とはいえ、さすがにアクチュアリー試験の過去の試験要領が今残っているはずもなく、下記は記憶と今アクチュアリー会のホームページに残っている限りの情報を頼りに作った「暫定版」です。
記憶違い等もあるかも知れませんので、皆様のご指摘(又は追加)をお待ちしております。
〜1988(昭和63)年
1次試験・2次試験の区別はなく、1科目でも受かれば準会員(研究会員はなかった)
6科目(数学1(確率)・数学2(統計)・保険数学1(基礎)・保険数学2(応用)・法規・経営)
なお、保険数学は生保数理(+保険数理2の一部に年金数理)であり、損保数理は含まれない。
(2010/5/3 追記)
いわきさんより、「昭和時代も研究会員はあったはず」というご指摘
http://twitter.com/s_iwk/status/13239866226
を受けたので、「(研究会員はなかった)」という記述に取り消し線を入れました。
(2010/5/5 追記の追記)
いわきさんより、当時の「研究会員」について
http://twitter.com/s_iwk/status/13353878058
当時はそもそも研究会員または準会員のみ受験可能だったので、試験を受ける前に入会が必要だったようです。入会方法は「入会の申込をし、理事会の承認を得」ることとあるので、例の正会員2名の推薦というやつでは。
とご教示をいただきました。
一応補足いたしますと、今の制度でも研究会員になるには試験に1科目合格することが基本ですが、「正会員2名の推薦」があれば(試験に合格していなくても)研究会員になることが可能です。
(2010/5/5 追記の追記の追記)
さらに上記に関して、生保アクチュアリーのむしまん(@mushiman2)さんより、
http://twitter.com/mushiman2/status/13397655313
iaj100年史の36、96、185ページにくわしいようです
とご教示をいただきました。
ちなみにIAJとはthe Institute of Actuaries of Japanの略で日本アクチュアリー会の英訳になります。
ついでに申し上げると、
(1)日本アクチュアリー会正会員はFIAJ(Fellow of the Institute of Actuaries of Japan)
(2)日本アクチュアリー会正会員はAIAJ(Associate of the Institute of Actuaries of Japan)
です。
1989(平成元)年
新試験制度(1次試験・2次試験)制度の開始
1次試験:数学1、数学2、保険数学1、保険数学2、年金数理、会計・経済
2次試験:保険コースと年金コースで各2科目
保険コースは、更に生命保険と損害保険に分かれており、
保険1が主に商品分野、保険2が主に経理分野
年金1は適確退職年金、年金2は厚生年金基金制度等
保険1を生保でとって保険2を損保(あるいはその逆)も可能だった?(実際やった人はいないと思いますが)
1次試験に1科目合格で研究会員、1次試験に全部合格すると準会員
旧試験制度に合格による免除(みなし合格)措置あり
なお、旧試験制度の1科目以上合格で「準会員」という呼称があっても、1次試験の残り(みなし合格以外の)科目に全部合格しないと2次試験には進めない。
1995(平成7)年
投資理論が追加され会計・経済・投資理論に
このときのウエートは会計30、経済・投資各35
2000(平成12)年
1次試験が6科目から現在の5科目に再編
数学1+数学2⇒数学
保険数学1+保険数学2⇒生保数理
損保数理が追加
このころ投資理論の試験範囲にデリバティブが追加され、投資理論のウエート増?
なお、保険コース、年金コースが生保コース、損保コース、年金コースに再編され、生保1+損保2(損保1+生保2)のクロス
合格は明確に不可になった。
再編前の試験合格による免除(みなし合格)措置あり、
数学1・2の両方に合格していると数学が免除
保険数学1・2の両方に合格していると生保数理が免除
数学1・2、保険数学1・2のどれか1科目にでも合格している人は損保数理が免除だったはず?
2005(平成17)年
数学にモデリングが加わる。
このころ会計の教科書の変更?
( 2010/10/12 追記
[twitter:@primes2]さんのご指摘
http://twitter.com/primes2/status/27044101673
により変更)
2006(平成18)年
数学の試験問題が全部選択式に。(翌年のマークシート式への布石?)
会計の教科書が変更
( 2010/10/12 追記
[twitter:@primes2]さんのご指摘
http://twitter.com/primes2/status/27044101673
により変更)
2007(平成19)年
1次試験がマーク式に
このころ、不合格の場合の得点ランクの通知開始?
2009(平成21)年
会計・経済・投資理論に足切りラインの設定(3分野のそれぞれで4割とれなければ不可)
これまで「噂」の域を出なかった合格ライン(60%)の明示
投資理論の教科書変更
会計、経済の教科書がそれぞれ新版に
経済の試験範囲に「ゲーム理論」が追加
以上
(2010/5/3 追記)
Yosuke Fujisawa(@actuaryjp)さんより
米国アクチュアリー試験の歴史に関してまとめたPDF
http://www.anea-asna.ca/documents/2006-2007/Waterloo_University_-_Educating_the_21st_Century_Actuary_by_Mary-Hardy.pdf
があるというご教示
http://twitter.com/actuaryjp/status/13248953432
をいただきました。
(2010/5/5 追記の追記)
Yosuke Fujisawaさんより上記の資料について
http://twitter.com/actuaryjp/status/13302104580
伝統的なアクチュアリー技法→コンピュータの出現→金融工学との融合、という流れがよく分かる。作者は米国アクチュアリー会の試験責任者です。
があるというご教示をいただきました。
*1:かつての損害保険会社の保険計理人の要件の1つに準会員で実務経験10年以上というのがありましたが、この準会員も「5科目以上合格者」に限られていました。
アクチュアリーの転活(続々)
ブログのリファラーに2ちゃんねる関連のものが増えたので拝見すると、また2ちゃんねるで私のブログへのリンクが張られていたようです。いつものことながら本当にありがとうございます。
リンク元のトピックスで
ttp://society6.2ch.net/test/read.cgi/hoken/1266847112/630 *1
ttp://society6.2ch.net/test/read.cgi/hoken/1266847112/645
ttp://society6.2ch.net/test/read.cgi/hoken/1266847112/646
「TOEIC965、2009年会計士試験合格、税理士簿財法所合格
アクチュアリーKKT数学生保合格、早稲田政経卒、27歳、職歴都銀2年
現在無職 」
という方が(会計士としての採用を目指し)監査法人を10社以上回られてたという書き込みを目にいたしました。
会計士(試験合格者)の採用状況が厳しいとは仄聞しておりましたが、このような素晴らしいスペックを持つ方(念のために申し上げますが、皮肉ではありません。)が監査法人に10社以上受けられているのを目にするにつけ改めてその厳しさを再認識したというのが率直な感想です。
今回は「アクチュアリーの転活(続々)」ということで、この方に関して私の「感想」を述べさせていただきますが、前から何度か申し上げているように私は2ちゃんねるはROMに徹すると固く決めておりますので、このブログにのみコメントし2ちゃんねるの書き込みはいたしません。
元のご投稿者の方が、何らかの形でご覧になってくださると幸いです。
この方の場合は
(1)アクチュアリー試験3科目に合格しており、このまま受験を続ければ30歳までに準会員への到達が有力視されること*2
(2)公認会計士試験合格
(3)TOEIC965という英語力
あたりを武器にして、「怒涛の生保受け」を敢行すれば、生保に採用される可能性が十分あるのではないかと考えます。*3
アクチュアリー候補者で、この方に及ばないスペックで転職している例などいくらでも存在します。現時点までの唯一のネックは保険業の経験がないことくらいだと思います。(現在就業していない点は、もちろん、多少はマイナスにはなると思いますが、都銀の経験があり、今まで正規の就業形態を全く経験していないということではないので、決定的なものではないと考えます。)
ただ、このような(生保中心で活動を続ければ生保に入れる可能性の高い)方こそ、生保だけではなく、損保、信託、コンサル等にも幅広く目を見開いてくださると嬉しいです。
監査法人においてすら、全く目がないわけではないと考えます。
監査法人では、生損保会社*4を監査していますが、それだけではなく、一部の少額短期保険業者*5、各種の認可共済*6、住宅瑕疵担保責任保険法人*7等で会計監査が必要としているところが存在するようになっています。さらにそのような事業体の数は増大する可能性があります(末尾のURL参照)。
このような事業体では、保険・(共済)数理に基づき負債(責任準備金、支払備金)を計上しているので、アクチュアリアルな*8バックグラウンドを持つ人間が必要とされています。
更には、監査法人では、会計監査だけではなくコンサルティングも行っているはずなので、そのコンサルティングの対象にはそのような事業体も含まれると考えます。
強いて、この方にさらに取り組むべき点を見出すとすれば、
「アクチュアリーとしての知識*9「が(おそらく)御自身の想像されるより遥かに幅広い範囲で活用され、また今後その範囲が広がりつつある」
とことへの認識とその最大限の利用(候補先の選定及び面接時のアピールポイント)ただ、その1点なのではないかと思います。
その意味でもなるべく早めに
転職エージェントに登録されて一度エージェントとご相談
されるとよいのではないかと思います。
<参考URL>
●保険毎日新聞の記事
http://www.homai.co.jp/news/kiji/100419.htm
●拙ブログ *10
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100123
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100319
http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100322
*1:例によって先頭にhを補ってください。以下同様
*2:損保数理あたりがポイントになる可能性はありますが
*3:もちろん上記の記述以外の部分について−例えばPCのスキル等−は、通常(以上)のレベルと想定しての話です。例えばPCを全く使えないということであれば話は変わってきます。
*4:保険会社は資本金・基金が10億円以上必要で、会社法の規定により自動的に会計監査が必要
*5: 保険業法施行令第38条の2 http://www.nn.em-net.ne.jp/~s-iwk/2010-04-01/rei/a038_2.html の規定により資本金3億円以上で会計監査が必要
*6:例えば、消費生活協同組合の場合、消費生活協同組合法施行令第10条 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19SE373.html で負債の額が200億円以上で会計監査が必要。事業協同組合でも同様の規定
*7: 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律施行規則 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H20/H20F16001000010.html 第30条の規定により業務報告書に会計士又は監査法人の監査が必要
*8:actuarial:actuaryの形容詞形
*9:もちろん「経験」もですが、さすがに経験はないので…
*10:上の2つは該当トピックスでも紹介されていますが